今日は、COPDの病態について勉強していくよ。COPDの診断にはスパイロメトリーなどを使って行いますが、COVID-19 下では行えないことが多いと聞いています。ではどうやって診断するのでしょう。運動すると息切れをする病気だろうとわかった気になっているけど、まだまだ知らないことだらけです。今日もしっかり勉強していきましょう。
このブログでは、私が勉強してきたことや考え方、この治療ってどうなのかなとみんなが疑問に持っている事など(また趣味の筋トレとかも・・・)をなるべくわかり易く伝えていきたいと考えています。ぜひ読んでいってください。
COPDとは
COPDとは、慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)。慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病といえます。呼吸機能検査で気流閉塞を示します。
気流閉塞:抹消気道病変と気腫性病変が様々な割合で複合的に関与し起こります。臨床的には徐々に進行する労作時の呼吸困難や慢性の咳・痰を示します。
タバコ煙
タバコの煙には、5,300種類の化学物質が含まれています。その中には、何と200種類以上の有害物質が含まれ、発がん性物質は50種類以上にのぼります!有害物質のなかでも、よく知られているのは、ニコチン、タール(ヤニ)、一酸化炭素です。そのほかにも、ペンキ除去剤に使われるアセトンや、アリの駆除剤に含まれているヒ素、車のバッテリーに使われているカドミウムなど、体に大変有害な物質がタバコの煙に含まれています。
ニコチン
依存症形成に関わるのは,中脳に存在する腹側被蓋野のα4β2ニコチン性アセチルコリン受容体であるニコチンがこの受容体に結合すると、脳内報酬回路の一部である側座核にドーパミンが放出され一時的な快感や報酬感がもたらされる。多くの喫煙者は、明らかな快感や報酬感とは自覚していないが、少なくても「タバコは自分にとって利得がある」と感じさせられ、また吸うようにしむけられる。これがニコチン嗜癖「ニコチン依存症」と呼ばれる状態である。また、ニコチンはドーパミン以外にもノルエピネフリンやセロトニンなど多くの神経伝達物質の遊離にも関係するので、吸い方によっては眠気覚ましや気分高揚、イライラを抑える鎮静、その結果「タバコはストレス解消になる」「タバコを吸うと仕事がはかどる」という認知がつくられる。これが心理依存で、仕事の区切りや帰宅後のくつろいだときには必ず吸うなどがこれにあたる。
参照:ニコチン受容体と禁煙補助薬の作用機序 (第三章 禁煙外来の実践)崇城大学薬学部薬理学 内田友二
タール
タバコ煙には、タバコにもともと含まれている成分やその成分が燃焼する際の複雑な反応から生じる化合物が4,000種類以上ある。発がん性物質の代表的なものにはベンツピレン・アミン類・NNKなどがあり、他にもがんを引き起こす可能性のある物質が60種類以上含まれています。また、フェノールは、気管支に入った異物を取り除く繊毛細胞を傷つけてしまうので、有害物質が肺に入り込みやすくなってしまいます。1本のタバコに含まれるタールの量は微量です。しかし、喫煙の継続により蓄積されます。含まれるタール量にもよりますが、1日20本のタバコを吸う人は1年でコップ半杯のタールを肺に溜めることになります。1年でコップ半杯ということは、50年でコップ25杯ということです。現在では、肺がんの90%はたばこが原因だとされています。
一酸化炭素
有害成分のうちニコチン・タールに比べて意識されていないのが一酸化炭素(CO)です。COは肺胞壁から毛細血管への拡散がきわめて速いうえ、ヘモグロビンとの親和性が酸素に比べて 200~300倍高い。そのため、タバコを吸うと血液中CO-Hb濃度が増加し組織の酸素欠乏をきたす。組織内酸素不足が皮膚の老化、心血管病変の発症、整形外科的問題、胎児の発育不全などに大きく関与する。こうしたことが喫煙者のみならず非喫煙者も気づかずにいるが、流煙には主流煙より多くの COが含まれている。室内喫煙が喫煙者にとっても非喫煙者にとっても極めて有害でです。家の中で吸わないで!!あなたの家族にも友人にも悪影響ですよ~~~~!!
参照:タバコ学事始~なぜその葉は社会を蝕むのか~繁田 正子京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学
COPD全国疫学調査2001年
日本人の40歳以上のCOPD有病率は8.6%、患者数は530万人と推定されました。しかし、2017年の厚生労働省患者調査によると、病院でCOPDと診断された患者数は22万人です。つまり、COPDであるのに受診していない人は500万人以上いる!!多くの人々が、COPDであることに気づいていない、または正しく診断されていないんですね。また、日本人のCOPD有病率は、喫煙者と喫煙経験のある人の方が非喫煙者よりも高く、高齢者になるほど高くなる傾向があるそうです。また、喫煙歴のある人の6人に1人がCOPDになるそうです。
ということは、隠れCOPDがいるってことですね。こんな方いませんか?
「(2階まで階段上った後に)息切れするな~(;゚∀゚)=3ハァハァ歳でもとったかな(*´Д`)ハァハァ」
「かーーぺっ!!ゴホゴホ(ノД`)・゜・。咳や痰が多くなったな。」
歳をとったからその症状が出たのではないかもしれませんよ。COPDスクリーニングをしてみましょう。
日本のCOPD死亡数
2019年のCOPDによる死亡者数は17,836人でした。近年、COPDによる死亡者数は頭打ちになっていましたが、2018年に1995年以降で最高値を記録しています。COPDは20年以上の喫煙歴を経て発症する病気です。日本でも過去の喫煙率上昇の影響がCOPDによる死亡者数を増加させてきたと考えられます。
これまで、男性の喫煙率が高かったため死亡者数も男性の方が多いですが、女性の方がCOPD発症リスクが高いという報告も発表されています。
COPDの診断基準
①長期の喫煙歴などの暴露因子があること。
②気管支拡張薬を吸入後のスパイロメトリーで1秒率(FEV1.0/FVC)が70%未満であること。
③他の気流閉塞をきたした疾患を除外すること。
スパイロメトリー
呼吸機能検査の道具です。まず鼻をクリップでとめて、鼻から空気が漏れないようにします。そして、計測器とホースでつながったマウスピースを装着し、通常の呼吸を繰り返した後に、思いっきり吸ったり、勢いよく吐いたりして肺活量や1秒間にどの程度息を吐き出せるかなどを計測していきます。
「吸って吐いて~!!肺大きく吸って~~!!最後まで吐~~~~く!!また、元の呼吸をして~~今度は大きく吸ったら早く吐いてください。吐いて!はいて!はいて!」ってな感じで言葉かけをしてますかね。臨床検査技師さんが見たら怒られそうですけど( `ー´)ノ
1秒量
努力性肺活量のうちの最初の1秒間に吐き出した空気の量。
1秒率
1秒量を努力性肺活量で割った割合(%)。
こうした項目のなかでもとくに重要なのが「1秒率(FEV1.0%)」と「%肺活量(%VC)」です。
%肺活量(%VC) 拘束性障害
年齢や身長から予想される平均的な肺活量に対して自分の肺活量がどの程度なのかを相対的に表す数値です。平均と同じなら100%です。平均より2割引以下、つまり80%以下となると異常とされます。(逆に呼吸の能力の高い方は100%以上にもなります。)
肺が広がりづらくて息を十分に吸い込めない状態です。間質性肺炎、じん肺、古い胸膜炎、筋肉や神経の異常など
1秒率(FEV1.0%) 閉塞性障害
勢いよく息を吐き出したときに、一気にはき出した息の量のうち、最初の一秒でどの程度はき出すことができたかを表します。息の通り道がどこかで狭くなっている場合(閉塞がある場合)、最初の1秒ではなかなか吐き出すことができず、ゆっくりしか吐き出せなくなります。このような場合、1秒率(FEV1.0%)は低下します。1秒率(FEV1.0%)については70%を下回ると異常とされます。
息を吐き出しづらくなっている状態です。気管支喘息、慢性気管支炎、肺気腫、COPDなど
混合性障害
拘束性障害と閉塞性障害が併存している状態です。最近では比較的進行した肺気腫でもスパイロメトリーでまったく異常を示さないものがあったり、肺気腫と間質性肺炎が合併しているケースなどもまれではないことがわかってきています。スパイロメトリー単独で診断できるものではなく、胸部CT検査など他検査とも合わせた総合的な評価が必要とされています。
COPD病気分類
%FEV1.0 | ||
Ⅰ期 | 軽度の気流閉塞 | 80%以上 |
Ⅱ期 | 中等度の気流閉塞 | 50%以上80%未満 |
Ⅲ期 | 高度の気流閉塞 | 30%以上50%未満 |
Ⅳ期 | きわめて高度の気流閉塞 | 30%未満 |
予測値は年齢、性別、体格から計算される。
COPDスクリーニング
COPD集団スクリーニング質問票
現在、COVID-19 の影響でスパイロメトリー(エアロゾルの発生)を行えていない病院も多いのではないでしょうか。そこで「COPD集団スクリーニング質問票(COPD-PS:COPD Population Screener)」っていう、COPDの可能性があるかどうかを調べられる質問票があります。設問数が5問と少ないため、簡単に自己採点ができるものです。
参照:一般社団法人 GOLD日本委員会 COPD情報サイト PDFやガイドラインがあります。
合計スコアが高いほどCOPDの可能性が高くなるそうです。5つの設問それぞれで出た点数の合計が4点以上であれば、COPDの可能性があると考えられます。COPD-PSの合計スコアは、COPDの診断基準であるスパイロメトリ―による気流閉塞の有無(気管支拡張薬吸入後の1秒率が70%未満かどうか)を判別できることが検証*されています。* Martinez, F. J. et al.: COPD 5(2): 85, 2008
私は、2点でした。タバコを100本吸ったことがありました。〇〇~25歳くらいまで100本以上吸いましたかね。他は、0でしたので合計2点大丈夫だと思います。
CAT
COPDの状態が健康と日常生活にどのような影響を与えているか、COPD患者と主治医が知り、共有する質問票です。このテストによって、今のCOPDの状態を的確に医師に伝えられ、またテストの点数によって、患者の状態により合った治療を行うことができる。と書かれています。
参照:一般社団法人 GOLD日本委員会 COPD情報サイト PDFやガイドラインがあります。
CATは1点でした。階段や坂道で少し息が切れるかな。歳かな?40だもんね!!歳じゃないかも(;’∀’)
IPAG(International Primary Care Airways Group)
IPAGは、GOLD ( http://goldcopd.org/ )、GINA ( http://ginasthma.org/ )、ARIA ( http://www.whiar.org )のガイドラインに基づいて、プライマリケア (Primary care:総合的に診る医療)施設で実践できる実用的診断法と治療法を選択し、慢性気道疾患患者への最良なケアの提供を助ける「IPAG診断・治療ハンドブック」です。
40歳以上で喫煙歴がある成人には、COPDの可能性を考慮することが望まれます。IPAGの作成した「COPD質問票」はCOPDの簡易スクリーニングに有用な問診票です。また、ぜん息との鑑別を要する場合は、「鑑別診断質問票」を用いて、COPDまたはぜん息のどちらの可能性が高いかを診断できます。
COPD質問票
呼吸器症状があり、以下に当てはまる者はCOPDの可能性を考慮して、COPDの可能性が高いかどうかを判断する必要があります。
- 咳嗽、喘鳴、息切れ(呼吸困難)、胸部絞扼感、水様性鼻汁および/または鼻掻痒感の症状のある人
- 喫煙の経験がある人(職場での塵埃および化学物質、または家庭での調理および暖房燃料による煙への曝露もCOPDを引き起こす)
- 40歳以上の成人
- 呼吸器疾患の診断歴がないか、現在定期的に呼吸器疾患の治療を受けていない人
評価: 患者の回答から総ポイント数を求める。
17ポイント以上 | COPDの可能性が考えられます。スパイロ検査(気管支拡張薬吸入後の1秒率測定を含む)や身体診察などによってCOPDの診断を確定する必要があります。 |
---|---|
16ポイント以下 | COPDの可能性は低いと考えられます。ぜん息など別の診断を検討する必要があります。 |
ちなみに私は、12点!!喫煙指数は高かったです。少しやせ気味ですね。でも、16点以下よかった。
全身性疾患としてのCOPD
COPDは労作時の呼吸困難だけではなく、全身の炎症を引き起こすと言われています。肺から血流を介して全身の臓器に運ばれる有毒物質、さらには肺内で産生された炎症性メディエーターが全身に及ぶことで生じる(spill-over仮説)と考えられています。しかし、近年、肺の細胞外小胞(extracellular vesicle)が全身性炎症に関与している可能性を示す報告や身体活動性低下そのものが全身性炎症の惹起とCOPDの併存症に影響するといった報告等、さまざまな炎症メカニズムの可能性が議論されており結論を得ていないって言われています。
併存として高脂血症、高血圧症、虚血性心疾患、糖尿病、不整脈、GERD(gastroesophageal reflux
disease:ガード胃食道逆流症)等、このような内科疾患とともに、不安症・うつ、前立腺肥大症、白内障等内科領域の疾患以外の頻度も高いとされています。また、喘息・COPDオーバーラップ(Asthma and COPD overlap:ACO エイコー)慢性気流閉塞を示し、喘息とCOPDの各々の特徴を有する疾患、気腫性合併肺線維症(combind pulmonary fibrosis and emphysema:CPFE)上肺野の気腫性病変と下肺野の線維化を認めることを特徴とする臨床症候群。進行するとガス交換障害と肺高血圧症が発現。などの肺疾患の併存が起こる場合もあります。
ただ息切れの改善だけを考えよう!!ってことじゃダメなんですね。いろいろな疾患が併存しています。注意しながら関わっていかなければ、いけませんね。特に理学療法士ならサルコペニア(sarx:筋肉、penia:喪失、加齢に伴って生じる骨格筋量と骨格筋力の低下)・フレイル(Frailty:虚弱、高齢者が筋力や活動が低下している状態)をどのように改善していくか。栄養や患者指導・薬物療法などと一緒に考えていかなければなりませんね。
はーい。今日はここまでです。ある程度COPDのことが分かったかな。まだまだ知らいことだらけだったかもしれませんね。
今日も文献やGoogle先生ありがとう。また見てね。
コメント