こんにちは!今回は、糖尿病スティグマについて勉強していくよ。先日研修会でスティグマについて聞きました。何ぞやそれはと思い、早速調べましたので紹介しますね。知っているようで知らないことが多いです。ついでではありますが、糖尿病の理学療法についても話していきますね。では、勉強しましょう。
このブログでは、私が勉強してきたことや考え方、この治療ってどうなのかなとみんなが疑問に持っている事など(また趣味の筋トレとかも・・・)をなるべくわかり易く伝えていきたいと考えています。ぜひ読んでいってください。
まず糖尿病ってどんな病気?
インスリン作用不足による作用不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝症候群です。
1型糖尿病:自己免疫性に膵β細胞が破壊されることがインスリン作用不足の主な原因です。
2型糖尿病:発症には、β細胞量の減少によるインスリン分泌低下やインスリン抵抗性をきたす素因を含む複数の遺伝因子、過食・運動不足・肥満などの環境因子、加齢などが関係しています。
インスリン:膵臓のβ細胞で作られるホルモンです。糖分を含む食べ物は消化酵素などでブドウ糖に分解され、小腸から血液中に吸収されます。食事によって血液中のブドウ糖が増えると、すい臓からインスリンが分泌され、その働きによりブドウ糖は筋肉などへ送り込まれ、エネルギーとして利用されます。
糖尿病の疫学的
わが国の20歳以上の成人において、
「糖尿病が強く疑われる者」は約1000万人
「糖尿病の可能性を否定できない者」は約1000万人
治療を受けている者の割合は、69.9%(男性74.1%、女性64.0%)
参考資料;R01_ⅰ_本扉.indd (mhlw.go.jp)
糖尿病の医療費1兆2239億円
糖尿病の合併症 神経障害11.8% 腎症11.1% 網膜症10.6% 足壊疽0.7%
糖尿病診断基準
1.①早朝空腹時血糖値126mg/dl以上
②75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT:Oral Glucose Tolerance Test)2時間値200mg/dl以上
③随時血糖値200mg/dl以上
④HbA1c:6.5%以上
のうち①~③のいずれかと④が確認されれば、糖尿病と診断されます。
2.①~④のいずれか1つだけを認めた場合「糖尿病型」と診断されます。また、別の日に再検査を行い、再び「糖尿病型」が確認されれば糖尿病と診断されます。ただし、HbA1cのみの反復検査で糖尿病と診断することは不可とされています。
3.血糖値が「糖尿病型」(①~③のいずれか)を示し、かつ次のいずれかの条件が満たされた場合は糖尿病と診断されます。
・糖尿病の典型的症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)の存在
・確実な糖尿病網膜症の存在
4.過去において、上記1.~3.の条件が満たされていたことが確認できる場合には、現在の検査値が上記の条件に合致しなくても、糖尿病と診断するか、糖尿病の疑いを持って対応します。
5.上記1.~4.によっても糖尿病の判定が困難な場合には、糖尿病の疑いをもって患者様を追跡して時期において再検査をします。
糖尿病スティグマ(Stigma)って?
スティグマ(Stigma)
烙印、汚名、不名誉のしるしという意味があります。ギリシャ語で、奴隷や犯罪者の身体に刻印された「しるし」を意味する。その後キリスト教文化においては、十字架上のキリストの身体の傷と同じ聖痕を意味した。現代では、身体上の障害や、性格上の際立って目立つ個人の特徴、人種・民族・宗教などの集団的特性など、他と異なっているがために望ましくないとみなされる印のことを意味して使われています。
では、糖尿病患者様に対してのスティグマってどういうことでしょう。
糖尿病患者に対するスティグマとは
糖尿病の場合、例えば生命保険に加入できない、住宅ローンを組めない、結婚の障壁となる、就職に不利になる、などが挙げられます。なぜスティグマが生じるのかというと、
①治療手段が限られていた過去のイメージが定着してしまった。
②事実とは異なるイメージが独り歩きしている、などがある。
例えば、「糖尿病に罹患すると寿命が10年短くなる」というのは、医療従事者もよく言っていました。私も聞いたことがあります。しかし実際には、糖尿病患者と一般人口の平均余命(40歳の糖尿病患者さんの平均余命、男性39.2歳、女性43.6歳、200年簡易生命表では40歳の平均余命、男性39.0歳、女性45.5歳)にはほとんど差がないことが報告されています。また糖尿病患者と一般集団の寿命の差は、以前の調査よりも短かくなっているとの報告もあります。
糖尿病患者様の死因の第1位はがん38.3%、感染症17.0%、脳卒中6.6%や心疾患4.8%、腎不全3.5%。つまり適切な治療と、食事療法・運動療法を続けて症状の改善を行えば、「死に至る病」を避けられ、健常者と変わらない寿命を全うすることも可能と言われています。
また、糖尿病のスティグマ形成に、医療従事者、とくに糖尿病治療や療養指導に携わる医療者が深く関わっているとされています。糖尿病治療の目標が達成されないことを患者様の自己管理の低下のせいにすることや、エビデンスの低い治療や療養指導、患者本人が実行不可能な生活習慣の是正を求めること、逆に患者の自己管理能力を低く見積もって治療計画を立てることも、医療従事者の糖尿病患者へのスティグマに起因すると言われています。(医学のあゆみ 273巻2号 糖尿病とスティグマ -Cure,CareからSalvation(救済)へ はじめに――日本の糖尿病医療がスティグマにどう関わっているか (ishiyaku.co.jp)医療従事者がこのような態度を示す場合、患者は治療を継続することを拒否して治療中断、多くのストレスを抱えながら治療継続を強いられる、治療計画へのアドヒアランスが低下する、医療従事者とのコミュニケーションが不足することになり、適切な治療関係とは程遠い状態に陥るとされています。
アボカシー(Advocacy)の重要性
医療従事者も、糖尿病患者が社会のなかでおかれている現状を認識し、正しい知識を伝え患者に寄り添った立場から広く社会に訴えかけること、患者の権利を擁護する活動を起こす必要があるとされています。このような活動を“アドボカシー(advocacy)”とよびます。日本糖尿病と日本糖尿病協会でアドボカシー委員会を設立しておりこちらも参考にして頂くとよりわかりますよ。
私たち医療者が、糖尿病ではない人と変わらない一生を送ってもらいたいと言いながら、患者様の不利益なことを発信していってはいけない。これは、単に糖尿病患者様だけではありません、整形疾患・脳血管疾患など多くの疾患でも同じです。勉強をしないで新しい知見が出ているのに昔の治療ばかり行っている私!!もっと勉強しろ。今自分に喝を入れました。皆さんも一緒に勉強していきましょう
運動資料
運動の資料もありましたのでこちらを参考にしてください。diabetes_prevention_2017.pdf (nittokyo.or.jp)運動の方法を見ていただくとわかるのですが、あまり指導したことがない内容だったので、私は新鮮でした。例です↓回復期の病院で勤務しているので、骨折の方や脳梗塞の方・高齢の方には少し難しいと感じます。
糖尿病 理学療法の流れ
①糖尿病予備軍の場合:発症予防のための運動療法を行う。
②糖尿病がある場合 :病型分類と病態に応じた理学療法を行う。
急性合併症があれば、安全管理を優先する。
糖尿病の合併症
高血糖による意識障害
ケトアシドーシス:糖尿病の急性代謝性合併症で、高血糖、高ケトン血症、および代謝性アシドーシスを特徴:悪心・嘔吐・腹痛を引き起こし、脳浮腫・昏睡・死亡に発展する)
高血糖高浸透圧症候群:重度の高血糖・極度の脱水・血漿浸透圧高値、および意識変容を特徴:昏睡,痙攣発作,死亡など)
低血糖昏睡など
慢性合併症がない場合は、有酸素運動、レジスタンス運動などを中心とした理学療法を行い、ある場合には、合併症に応じた理学療法を行う。また、各ライフステージの特徴を知り、それに応じた理学療法を行う。
2型糖尿病に対しては、最初は理学療法(有酸素運動、レジスタンス運動など)と食事療法、生活習慣改善に向けての教育を行い、血糖コントロールの目標が達成されたならばその治療法を継続し、不達成ならば薬物療法も加えて治療する。
慢性合併症
糖尿病合併症の中で慢性的に進行するものを指し、長時間持続する高血糖・脂質異常を含む代謝障害と、高血圧などの血管障害因子によって起こる全身の血管を中心とした組織の変性・機能喪失が特徴です。
細小血管症:神経障害、網膜症、腎症
大血管症:動脈硬化、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈性疾患など
糖尿病神経障害の診断
1糖尿病性多発神経障害に基づくと思われる自覚症※
2両側アキレス腱反射の低下あるいは消失
3両側内果振動覚低下(C128音叉にて10秒以下)
3項目のうち2項目以上を満たす場合を神経障害ありとしています。
※自覚症状:両側性であり、足趾先および足底の「しびれ」「疼痛」「異常感覚」であり上肢のみの症状はとらない。
神経障害が重症化すると、感覚の脱失や異常、筋委縮や筋力低下が発現し、日常生活を行うための身体機能・能力が顕著に障害されます。
自律神経障害
不整脈や心停止を生じやすく、突然死の危険性もあります。また、交感神経障害による末梢血管の収縮障害により起立時の低血圧も診られます。
胃無力症により胃内容の排泄が遅延すると、胃部膨満感、嘔吐をきたします。
下痢と便秘を繰り返すことも特徴。皮膚の交感神経障害により発汗の減少あるいは増加が生じます。
歩行
歩行中の膝関節や足関節の可動性は減少しており、歩幅の減少、歩隔の増大、歩行速度の低下、両脚支持時間の延長、不安定性の増大が生じます。さらに股関節の伸展可動域が減少し、歩行速度の低下が診られます。
足病変
足部の変形や関節可動域制限などによる足底圧上昇、足底胼胝(たこ)、靴ずれ、熱傷、外傷、爪病変、皮膚病変などにより潰瘍を形成します。
足病変の評価
裸足での足部の観察、糖尿病神経障害とLEAD(lower extremity arterial disease:下肢動脈疾患)の評価が基本です。
5.07Semmes-Weinstein monofilament
モノフィラメントによる圧触覚検査では、5.07Semmes-Weinstein monofilamentを用いて足背・足底の複数ヵ所で圧触覚を評価します。10gの圧を加えることのできるモノフィラメントを足趾および足背で知覚できない症例は潰瘍形成リスクが高いとされています。
第3中足骨頭と第5中足骨頭のいずれかが覚知不能の場合を陽性としてもよいと言われています。なので、まずこの2ヵ所に当てて見て判断するのがよいと言われています。
音叉による振動覚の検査
on-off法(on-off technique):母趾の背側に当てたり離したりして、振動の有無(onとoff)を患者様に話してもらいます。
時間法(timed technique):患者が音叉の振動を感じなくなってから、検者の母指のMP関節に当て、検者の感じる振動が何秒持続するかを測定。各足4回ずつ行って、平均を取ります。長いほど患者の振動覚が低下していることになります。
Ipswich Touch Test
患者様に目を閉じてもらい、両側の母趾、第3趾、第5趾の先端を検者の指先で1~2秒軽く触れて、触覚を確認する検査です。2ヵ所以上の無感覚で異常と判断されます。この検査は、5.07Semmes-Weinstein monofilamentを用いた触圧覚テストと同等の精度があるとされています。
足関節上腕血圧比(ankle brachial pressure index:ABI)
この式の結果が0.9未満となる脚で、動脈が詰まり気味であることを表します。通常は1.0以上
ちなみにASO(閉塞性動脈硬化症:arteriosclerosis obliterans)の症状です。
足背動脈・後脛骨動脈の触知
足背動脈・後脛骨動脈が脈拍消失していないか
足関節の変形
hanmmer/claw toe 、Charcot関節は潰瘍形成の独立した危険因子であり、足底圧上昇と関連するため、観察が必要です。
シャルコー関節(Charcot関節):疼痛の知覚および位置感覚の障害による急速破壊型の関節障害。関節の腫脹、液貯留、変形、不安定性などがある。骨の断片化、骨破壊、新たな骨増殖、関節裂隙の狭小化
運動療法
歩行
1回15~30分間、1日2回(1日の歩数約8,000~9,000歩)、週3日以上が望ましい。ただし、日常生活において身体活動量を増やすだけでも長期間継続すれば効果があるとされています。ちなみに10分間行った生活動作の歩数でフレイルの資料ですが掲載しときますね↓
レジスタンス運動
レジスタンス(抵抗)運動では、トレーニングマシーンなどの機器、ダンベル・ゴムチューブなどの道具を用いたもの、腕立てやスクワット、踵上げなど自重を用いたものがあります。私は主に自重トレーニングとゴムチューブ(セラバンド)ですけど!!
筋量増加促進目的に週2-4回、1Repetition Maximum(RM)の70-85%負荷で8-12回繰り返す1-3セット、休憩は1-2分、筋耐久型レジスタンストレーニング(MERT)では週2-4回、1RM70%以下の負荷で10-25回繰り返し2-4セット、休憩30秒-1分
糖尿病患者の下肢筋力は健常者と比べて早期に10~20%落ちるとされており1)、体力的に余裕のある日常生活を送るには大腿四頭筋の体重支持指数(最大筋力を体重で除した値Weight Bearing Index:WBI)が0.8以上必要であり、0.4を荷重歩行の閾値とされています。筋力の維持・向上を目的としたレジスタンス運動は糖尿病患者においても有用であると言われています。(一般的なレジスタンストレーニングを超えて:2型糖尿病の成人に対する治療的介入としての「筋肥大型レジスタンストレーニング」と「筋持久力型レジスタンストレーニング」の比較:系統的レビュー及びメタ分析 – 公益社団法人 日本理学療法士協会 (jspt.or.jp)
1)Nomura T, Ikeda Y, Nakao S, et al; Muscle strength is a matter of insulin resistance in patients with type 2 diabetes; a pilot study. Endocr J 54, 791-796, 2007.
運動禁止・制限が必要な場合
空腹時血糖値250mg/dl以上、尿ケトン体陽性、眼底出血、腎不全、心疾患、骨・関節疾患、壊疽、急性感染症、高度の自律神経障害など
はい!!ちょっと投稿が遅れてしまいましたけど今日はここまでにしたいと思います。スティグマの話だけしようと思ったのですが、なんだかこれもあれも知りたいと調べていたら少し長くなってしまいました。最後まで読んで頂いてありがとうございます。また次も見に来てくださいね。
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