今日は、みんながよく知っている?呼吸不全について勉強していきます。令和5年度、3学会合同呼吸療法認定士の更新のための講習会を受講したのですが、そこで問われた、なぜ肺不全じゃないのかについて面白かったので、私も復習がてら勉強したことを話していきますね。これで呼吸不全は怖くない?それでは一緒に勉強しましょう。
このブログでは、私が勉強してきたことや考え方、この治療ってどうなのかなとみんなが疑問に持っている事など(また趣味の筋トレとかも・・・)をなるべくわかり易く伝えていきたいと考えています。ぜひ読んでいってください。
なぜ肺不全じゃないのか
皆さんは、心不全、腎不全、肝不全、多臓器不全って言葉を知っていますか?それぞれが各臓器に言葉で述べられていますよね。しかし、肺が悪いのに何で肺不全と言わないのでしょう?あまり疑問に思わなかった私ですが、問われてみたら確かに何でだろうと感じました。肺の臓器が悪いのだから肺不全だろうと・・・考えが浅い!!俺のばか!!呼吸不全以外の心不全、腎不全、肝不全はその臓器が完全じゃない状態をいうのですが、呼吸不全は肺はもちろん、肺疾患以外の疾患でも呼吸に影響が出ることがあるので呼吸不全と呼ばれています。
呼吸不全(respiratory failure)の定義
呼吸機能障害のため動脈血ガス(特にPaO₂とPaCO₂)が異常値を示し、そのため正常な機能を営めない状態であり、室内気吸入時のPaO₂が60mmHg以下となる呼吸器系の機能障害、またはそれに相当する状態と定義されています。
Ⅰ型呼吸不全:PaCO₂45㎜Hgを下回る場合
Ⅱ型呼吸不全:PaCO₂45㎜Hgを超える場合
慢性呼吸不全:呼吸不全状態が1か月以上持続した場合
呼吸不全の原因
肺:COPD、間質性肺炎、肺炎、肺癌、肺結核後遺症など
肺以外:ARDS、神経筋疾患(ALS、筋ジストロフィー)、出血性ショック、薬剤性(眠剤の過剰摂取)など
ARDS(acute respiratory distress syndrome急性呼吸促迫症候群)
血管の透過性が高くなるため、血液成分が血管の外に漏れ出てしまいます。それにより、本来は空気で満たされるべき空間が血液成分に置き換わってしまい、肺が持つガス交換機能が障害されてしまいます。血管の透過性が高くなることを主体として発症する急性呼吸窮迫症候群は、専門的には「透過性亢進型肺水腫」と呼ばれることもあります。広範囲に肺が障害を受けることになるため、重篤な呼吸障害を起こします。
原因は、肺炎や敗血症、多発外傷や高度の熱傷などが頻度として多いです。また、急性膵炎、有毒ガスの吸入、薬物中毒、溺水、肺挫傷、放射線肺障害、輸血など
敗血症
感染症がきっかけとなって起き、二次的な症状が出現する。具体的には、何らかの感染症を起こしている細菌などが増殖して炎症が全身に広がり、その結果、重大な臓器障害が起きて重篤になっている状態。どんな感染症でも敗血症を起こし、引き金になる可能性があり、特に、免疫力がまだついていない乳幼児や、高齢者、糖尿病などの慢性疾患やがんなどの基礎疾患がある人や、病気治療中で免疫力が低下している人は、感染症から敗血症を起こすリスクが高いとされています。
急性膵炎
急性膵炎とは、胃の後ろ側にある“膵臓”に急激な炎症が起こり、みぞおちや背中に強い痛みなどが生じる状態です。膵臓には、血糖値をコントロールするホルモン(グルカゴン:血糖値を上げる インスリン:血糖値を下げる ソマトスタチン:インスリンおよびグルカゴンの分泌を抑制)を出すはたらきと、食べ物を消化する“膵液”という消化酵素を出す(十二指腸でさまざまな栄養を分解したり、胃液で酸性になった食べ物を中和する。 弱アルカリ性の透明な液体で、1日に約500〜800ml分泌)はたらきという、大きく2つのはたらきがあります。
通常、膵液は膵管を通って十二指腸へ移動して初めて活性化し、食べ物の消化を助けます。しかし、何らかの理由で膵臓の中で膵液が活性化してしまうことがあり、活性化した膵液に膵臓自身が消化されてしまうと、急性膵炎に発展します。
急性膵炎は主に女性では70歳代、男性では60歳代の患者が多く、どちらかというと男性に多いことが分かっています。
急性膵炎に関連した肺傷害の発生率は 15 ~ 55%であり 、その程度は軽度の低酸素血症から重症ARDSまでさまざまである。その発症機序として、過剰なサイトカイン産生により活性化した好中球から放出される蛋白分解酵素が肺血管内皮細胞を傷害するという報告 や、血中に逸脱した膵酵素が肺サーファクタントを分解するとの報告 はあるが、原因は確立されていないとされています。
ALS (amyotrophic lateral sclerosi)
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
A:アミオトロフィック(Amyotrophic)の略で筋肉が縮むこと(筋萎縮)
L:ラテラール(Lateral)の略で側部を意味。脳から下りてくる上位ニューロンの束(錐体路)が脊髄の左右の側面(側索)を通ることから来ています。
S:スクレローシス(Sclerosis)の略で壊れたあとが硬くなって働かなくなってしまうという意味。
したがって、ALSは脊髄と脳の運動神経が変性し、脱落するために起こるものです。その結果、手が握れなくなる、舌がしわしわになって呂律が回りにくい、飲み込みにくい、立ち上がりにくい、歩きにくいなどという症状から始まり、徐々に手足が痩せていくことになります。
呼吸機能:上気道(咽頭および喉頭)筋および呼吸筋(横隔膜、補助呼吸筋)の筋力低下の結果として呼吸器合併症を発生し、嚥下障害からの誤嚥性肺炎および呼吸筋力低下による呼吸不全(換気不全)に至ります。ALS においては、睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing:SDB)が高頻度で発生します。SDB は通常、日中の呼吸器症状と慢性呼吸不全状態に先行して出現し、患者の生活の質(quality of life:QOL)と予後に大きな影響を与えます。ALS における SDB を非侵襲的人工換気(non-invasive ventilation:NIV)で管理すると、QOL と生存率が向上します。したがって、ALS 患者の SDB を早期に発見し管理することが重要です。さらに呼吸不全が進行した場合には、気管切開下陽圧人工呼吸(tracheostomy positive pressure ventilation:TPPV)が生存期間を延長するための選択肢になります。
私も訪問リハビリでALSの患者様を担当したことがありますが、初めは基本動作(寝返り・起き上がり)や移乗動作が支える程度の介助でできていたのに、徐々に筋力低下⇒介助量が多くなり全介助となりました。また、TPPVを使用していたので、一回換気量も表示されていたため、徐々に深呼吸時の換気量も減ってたのも記録できました。家族の方やご本人に動作の介助指導や呼吸介助、排痰、コミュニケーション機器の提案、精神面でのサポートなどなど、何年も前のことですが今でも「もっとこうしておけば・・・」と考えさせられます。
呼吸不全のメカニズム
低酸素血症(組織の酸素分布が低下)は、肺実質におけるガス交換障害(酸素化不全)、換気の障害(換気不全)のいずれによってもおこります。
ガス交換障害:拡散障害、換気血流比不均等分布、シャント
この3つの病態は、高二酸化炭素血症は引き起こしません
換気不全:肺胞低換気
高二酸化炭素血症をきたす。
ガス交換障害
拡散障害
間質性肺炎などで肺胞の壁が厚くなった場合。この肺毛細血管への酸素の受け渡しが障害される。二酸化炭素の拡散能力は、酸素に比べると非常に早いため(酸素の数十倍)問題となることはないです。
図1のように毛細血管を流れる静脈血液が肺胞と接触する際に、酸素が取り込まれると同時に二酸化炭素が排出されます。肺胞と毛細血管の間には、血液空気関門(Ⅰ型肺胞上皮細胞、基底膜、毛細血管内皮など)呼ばれる部分があり、ここを通りガス交換が行われます。
図2は血液空気関門が何らかの影響で肥厚した状態です。この状態では、肺胞から毛細血管へ酸素が移動するのに時間がかかるため、酸素が十分供給されず、低酸素血症をきたします。二酸化炭素は拡散能力が酸素に比べ非常に早いため、生理学的に問題になるような高二酸化炭素血症はきたしません。
換気血流比不均等分布
肺動脈血は、肺毛細血管網を通過する過程でO₂とCO₂の交換が行われ、動脈血化されます。このガス交換が十分に行われるためには、肺胞換気量と肺血流量が正常に保たれているのみでは不十分であり、肺内各領域で換気量と血流量のマッチング、換気血流比が適切である事が重要になってきます。健常肺では、血流は重力の影響で下肺に多く分布するので、肺内の換気血流比は一様ではないです。その値は不均等に分布しています。疾患肺では、血流が非常に少ない肺胞や換気が非常に少ない肺胞が出現して、健常肺よりもさらに不均等分布が増大します。その結果として低酸素血症を呈しますが、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO₂)に対する換気応答が維持されていればPaCO₂は上昇しません。A-aDO₂は拡大するが、酸素吸入で動脈血酸素分圧PaO₂は改善します。
肺尖(上)は、換気量が多いけど血流量が少ない。肺底(下)は、いろいろな臓器に押されて換気量は少ないけど血流量が多いって感じですかね。側臥位での自発呼吸と陽圧換気でも血流比の違いをよく例えで出しますよね。こちらの資料見てください。
自発呼吸だと横隔膜が腹部を押し下げて吸気を行うため、下側の肺野に換気量が多くなります。しかし、陽圧換気だと上側の肺野に換気量が多くなり、血流が多い下側の肺野に換気が少なくなります。
換気/血流比(VA/Q Q:血流量)
数億個の肺胞すべてが、同一の換気量と血流量を受けることは、どんな健康な人においてもあり得ません。気道が閉塞されて換気に参加しない肺胞や、換気は良好な肺胞でも血管が閉塞されて血流がない場合(VA/Q=0)など、肺は多様な換気/血流比(VA/Q)の組み合わせで構成される。肺胞のすべてが同一の換気量と血流量を受けると仮定した場合には、VA/Q =4L/分 / 5L/分 = 0.8となる。1に近いほどいいとされます。低下している場合は、シャント量の増大、上昇は死腔の増大を意味します。
シャント(右左シャント)
気道の閉塞等で、血流が肺胞を通らず、換気が行われず静脈血のままであること。低酸素血症のひとつの因子です。右室から拍出された血液が肺胞気に接触せず、酸素化されずに左心系に流入します。A-aDO₂は開大し、酸素吸入を行っても、このシャント血は全く影響を受けないので、シャント率が高度の患者様では、PaO₂が上昇しにくいことがこの病態の特徴です。
生理的シャントと病的シャント
生理的シャント:正常肺では気管支静脈の肺静脈への流入と、左心室の小静脈が左心房へ流出する。
病的シャント:先天性心疾患による右左シャント、換気化されない部分の肺循環があり、シャントが高度になると低酸素血症を呈します。
例:肺内血管シャント、心内右左シャント、肺胞内の充満(無気肺、肺炎)、肺胞の虚脱(無気肺)、肺内毛細血管の拡張(肝肺症候群)など
肺循環系
肺循環系は体循環系と比べて低圧系である。肺動脈の収縮期圧は25mmHg、拡張期圧は10mmHg、平均15mmHgで、体循環系の動脈圧の約1/6である。このように低圧系であるので、肺循環系の血流は重力の影響を受ける。立位では、肺底部の血流は豊富であるが、肺尖部の血流は閉塞、阻害される傾向になる。VA/Qとしては、肺尖部で大きく、肺底部で小さくなる。
運動時のVA/Q
運動時に心拍出量が増えて、肺循環系の血流が増加すると、それまで閉鎖していた肺尖部の血管の再開通(recruitment)が起こる。他方、運動時には換気量も増えるが、その際、上部肋間筋や頚部の補助吸気筋の活動が現れるため、肺底部だけではなく、肺尖部での換気量も増える。運動時には、換気/血流比の肺内分布がより均一になり、ガス交換の効率が改善される。
A-aDO₂(肺胞気・動脈血酸素分圧較差)
A-aDO₂は、PAO₂(肺胞内酸素分圧)とPaO₂(動脈血酸素分圧)との差を表し、肺がどれだけ酸素を取り込む働きがあるかを表します。
A-aDO2=PAO2-PaO2=PIO2-PACO2/R-PaO2
PAO2:肺胞内酸素分圧
PaO₂:動脈血酸素分圧
R(呼吸商):0.8
PAO2=PIO2-PACO2/R=PIO2-PaCO2/R
A-aDO₂=150-PaCO₂/0.8-PaO₂
PaCO₂(動脈血二酸化炭素分圧) 正常値 40±5
PaO₂(動脈血酸素分圧) 正常値 90±10
*PaCO2,PaO2の単位はTorr(=mmHg)となります。
SaO2 (動脈血酸素飽和度) 正常値 95%以上
A-aDO2 正常値 15以下
pH 正常値 7.4±0.5
HCO3- 正常値 24±2
BE 正常値 0±3
*BEは検査した血液のpHが標準状態pH=7.4に対し不足あるいは余剰の塩基をあらわす。BE>0で血液はアルカリ性で塩基は過剰状態であることを、BE<0で血液は酸性で塩基が不足状態であることを表しています。
換気不全 肺胞低換気
換気は、吸気と呼気を繰り返し、外気と肺の空気の出入りを行う過程であります。これは呼吸中枢(延髄)を介する横隔膜、肋間筋などの呼吸筋の興奮・収縮によってなされています。何らかの原因により個体に必要な換気、特にガス交換に直接関与する肺胞換気量が低下した場合、肺胞内および血液中のO₂は不足し、逆にCO₂は蓄積されます。これを肺胞低換気と呼び、低酸素血症および高CO₂血症を呈します。肺胞低換気は、肺胞気酸素分圧(PAO₂)の低下を招き、低酸素血症となるため、純粋に肺胞低換気ではA-aDO₂は開大しない。
スパイロメトリーは最も基本的な呼吸機能検査で、肺活量(VC:vital capacity)、1秒量(FEV 1.0:Forced expiratory volume in one second)、1秒率(FEV1.0%)などを測定できます。FEV1.0%は70%、VCは正常予測値の80%を正常限界とし、FEV1.0%が70%未満である場合は閉塞性換気障害、VCが正常予測値の80%未満である場合は拘束性換気障害、両者をあわせもつものを混合性換気障害と分類します。
①努力性肺活量(FVC:forced vital capacity):最大吸気から努力性最大呼気を行ったときの最大吸気位から最大呼気位までの量。
②1秒量(FEV1.0):1秒間に呼出可能な量。
③1秒率(FEV1.0/FVC):1秒量を努力性肺活量で除したもの。
④%1秒量(%FEV1.0):1秒量を予測1秒量で除した値。
拘束性障害
肺の容積が縮小する異常であり、VCの減少が特徴的です。スパイログラムでVCが予測値の80%未満の時に、拘束性換気障害と診断されます。VCの減少のほか、各肺気量分画の減少、肺拡散能の低下、静肺コンプライアンスの低下などを伴います。
肺気量分画とは↓
肺拡散能:肺胞から肺胞の毛細血管に酸素などのガスを供給する能力のことです。通常は一酸化炭素(CO)について測定し、肺胞分圧1mmHg当たり1分間に肺胞気から血中に移行するCOの容積(mL)で表現します(DLCO:)。
これはCOのヘモグロビン親和性がO2の210倍もあり、低濃度で測定でき、かつ肺毛細管内のCOを0とみなせるため、検査が簡単であるからです。
肺胞と毛細血管の間ではガス交換が行われています。ただし、吸い込んだ空気と血液が直接接触するのではなく、ガス交換が行われるためには、肺胞を構成する細胞、肺胞を取り巻いている間質、血管壁の細胞などのバリアを通り抜けて酸素や二酸化炭素が移動しなければならない。このバリアを通り抜ける能力を肺拡散能といいます。
はい!今日はここまでにしたいと思います。だんだん何を書いているのか分からなくなってきましたね。でもまとめとして、肺不全とは言わないのは、肺以外の臓器の影響で呼吸が異常となることがあるからです。ここはすごい大事です。では、今日学んだことだけではなく他のことも勉強できますね。学びってありがたい。最後まで読んで頂いてありがとうございます。また遊びに来てくださいね。今回、更新が遅れたのは、今簿記の勉強をしてます。なんでかっていうと、両学長のファンで・・・今年から勉強していました。11月のテストに向けて勉強しているので、少し更新が遅くなるかもしれませんが、許してください。一緒にまた勉強していきましょう。
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