今日は呼吸理学療法の1つコンディショニングについて話していくよ。コンディショニングの中には、リラクセーションと呼吸練習、胸郭可動域練習、ストレッチング、呼吸介助・排痰法とありますが、今回は呼吸介助・排痰法を除いたものを話していきます。(次回話しますね!(^^)!)コンディショニングを知ることは、急性期の患者様や運動中に呼吸を整える際に使えますよ。では、しっかり勉強していきましょう。
このブログでは、私が勉強してきたことや考え方、この治療ってどうなのかなとみんなが疑問に持っている事など(また趣味の筋トレとかも・・・)をなるべくわかり易く伝えていきたいと考えています。ぜひ読んでいってください。
呼吸理学療法とは
呼吸理学療法(cardio-pulmonary physical therapy,respiratory physical therapy)とは、慢性期や急性期の呼吸管理において、呼吸障害の予防と治療のために適応される理学療法の手段です。
現在、慢性閉塞性肺疾患を中心に、多くのエビデンスが確立され、呼吸理学療法への関心も高くなっています。呼吸は、酸素を体内に取り込み、二酸化炭素を体外に排出する活動です。酸素は生命維持のために必要なエネルギーを生産するために使われいます。呼吸機能の重要性は、あらゆる疾患や障害に共通しており、呼吸理学療法は非常に幅広い分野を対象としています。
呼吸理学療法は、運動療法・コンディショニング・ADLトレーニング・セルフマネジメントに分かれており、それぞれ行う量が、重症の患者様から軽症の患者様では違います。
呼吸器関連疾患における各介入の推奨レベル
過去10年間にCOPDでは、運動療法を中心として呼吸リハビリテーションの有用性のエビデンスが集積され、間質性肺炎等の他の呼吸器関連疾患においても集積されつつあります。下の図を参照してください。
この図からも、どの呼吸器疾患や術前後の患者様でもコンディショニングは、適応が考慮されるとされています。呼吸状態をみながら行っていく必要があると考えられます。
コンディショニング
コンディショニング(conditioning)とは、「心身の調整」という意味があります。呼吸の患者様では、対象者のディコンディショニング(deconditioning)の状態を改善し、運動療法を効率的に行うために身体状態を整え、運動へのアドヒアランス(adherence:患者自身の治療方針の決定を積極的にすること)を高めるために行われると書いてあります。例えば運動療法の開始時には、効率のよい運動トレーニングを目標に、呼吸パターンの修正や柔軟性のトレーニングを行うことが望ましいとされています。
ディコンディショニング(deconditioning ):呼吸運動の障害、胸郭を含めた全身の柔軟性低下、筋力低下、筋の萎縮や短縮、高齢者にはサルコペニアが観察されると言われています。
コンディショニングに対する手技
リラクセーション(Relaxation)
リラクセーション(Relaxation)は、頚部・体幹の過度な筋緊張を抑制し、不必要な酸素消費量を減少させ、呼吸困難感の軽減に効果的であるとされています。
ストレッチング(Stretching)
呼吸補助筋である胸鎖乳突筋や斜角筋のマッサージやストレッチです。セルフマネジメントも指導できるといいですね。
・胸鎖乳突筋マッサージ(Slipping)
胸鎖乳突筋の起始部は胸骨頭は胸骨柄の前面、鎖骨頭は鎖骨前面内側3分の1、停止部は乳様突起です。起始部から停止部に向かいマッサージを行います(図の矢印は逆を向いてますが、私は停止部から起始部にSlippingを行うことがあります)。私は、Slipping(滑り:クリニカルマッサージ)という手技を使用し行います。軽擦法と強擦法の間くらいと私はとらえています。介入者の母指や4指が滑りやすくするためにタオルを首に置き頚部を回旋した状態でSlippingを行っています。
・胸鎖乳突筋ストレッチング
胸鎖乳突筋の作用としては、両側同時収縮で頚部屈曲、片側収縮では頸椎同側側屈・対側回旋です。なのでこの動作の反対をするとストレッチができます。ストレッチしたい側の鎖骨に手を置き、反対側回旋・側屈、伸展するとストレッチできます。前・中斜角筋もストレッチできます。
・斜角筋マッサージ
斜角筋、はまず前・中・後の4つに分かれており、
前斜角筋:起始:第3~6頸椎の横突起の前結節、停止:第1肋骨の上内縁、
中斜角筋:起始:第2~7頸椎の横突起の後結節、停止:第1肋骨の上外縁
後斜角筋:起始:第4(5)~6頸椎の横突起の後結節、停止:第2肋骨の外側面
最小斜角筋:起始:第7頸椎の横突起の前結節、停止:胸膜頂と第1肋骨の内縁
斜角筋の同定(「何であるか」を突き止める行為)するには、胸鎖乳突筋と僧帽筋、鎖骨を同定しその3つの筋・骨でできる三角形の内側に斜角筋があります。 鎖骨付近には腕神経叢や鎖骨下動・静脈があるため、Slippingを行う際は鎖骨付近を圧迫しないようにしましょう。
胸郭可動域運動(Thorax range of motion exercises)
肋間筋ストレッチ
内肋間筋前部・外肋間筋は吸気筋です。呼気時の内肋間筋が呼吸補助筋です。
肋間筋ストレッチ方法は、呼気時に肋骨を引き下げ、内外肋間筋のストレッチを行います 。両手の2~5指(母指以外)を動かしたい肋骨に上方から触知し、呼気と同時に下方に介助します。
肋骨捻転運動
上位肋骨を抑え、それより下の肋骨を上方へ呼気時に引き上げる。下位肋骨は斜め45度に引き上げる
シルベスター法(Silbester)
吸気で両手を上げ、呼気で下げる。 介助者が肋骨下部を固定する。この動作で一回換気量が増えると言われています。深呼吸と同じという文献もあります。救急車に酸素療法等の器具がなかった時に行っていたと言われています。
胸郭捻転運動
患者様の肩の下に手を腋窩(わきの下)のところまで回し、他側の手は胸郭下部を固定し矢印の方向に圧を加えます。難しいです。ご自身で動ける方の指導は、坐位での運動をを指導します。呼気に合わせて体幹を回旋させます。
胸郭側屈運動
肩下に腕を置き手は腋窩に入れます。他側の手で胸郭下部外側を固定します。下位肋骨を固定しながら呼気に合わせて上部体幹を術者の方向に引き寄せ肋骨間を伸張します。これも難しいですね。なので、坐位がとれてご自身でできる方の指導で図のように体幹の側屈を指導します。
背部過伸展運動
両手を患者様の両腋窩から肩甲骨部に回して、指頭は横突起部(下記参照)にくるようにします。母趾を除いた指を肩甲骨下端に置き、深吸気をさせながら手関節を掌屈(手のひら側に曲げる)し上背部を持ち上げます。これもなかなか難しいですね。坐位ができる方の図も載せておきますね。棒を使い胸を前に出しながら吸ってください。棒がない場合は、後ろに両手をついて肩甲骨を近づけるように、またお腹を前に出すように息を吸い、胸を張ります。骨盤の前傾を促すときも使えますね。余談です。
楽な体位
楽な体位を知っていることは、呼吸困難感が出たときにどんな態勢をとればいいかが判断できます。例としては、「運動中息切れが強い際は、坐位で前方に台を置き両手を台に乗せ呼吸を整えると楽になる」とかです。まず、どんな時に楽な呼吸がとれるか。また、どんな姿勢では呼吸が楽かを患者様と一緒に探していきましょう。
ファーラー位(Fowler’s position)
仰臥位で(あおむけに寝て)、上半身を約45度起こした姿勢。腹部の内臓によって肺が圧迫されることを軽減できるために呼吸が楽になるという利点があり、食事後に逆流をしないために取られたのがこのファーラー位です。手動でチルトアップするベッドでは柵に印をつけてそこまで上げてもらうように看護師と連携をとっています。
セミファーラー位(semi-Fowler’s position)
仰臥位で、上半身を15~30度起こした姿勢。ファーラー位と同様で、腹部の内臓によって肺が圧迫されることを軽減できるために呼吸が楽になります。ただし、腎臓部分に体位の圧力がかかりやすくなったり、体の部位の一部分に体圧がかかってしまうという欠点もあります。そのため定期的に体位を変える必要があります。もし介護者自らが体位を変えられないのであれば体位変換のサポートが必要となります。
ハイファーラー位(high Fowler’s position)
仰臥位で、上半身を60~90度起こした姿勢。ベッド上で食事する場合、背もたれが60度くらいになるようにします。首が後ろに反るようならば、頭の後ろに枕を置き安定させます。ずり落ちないように膝を軽く曲げられるようベッドを調節します。足の裏にはクッションを置き、足が不安定にならないようにします。
前傾坐位
上肢は、膝の上かテーブルの上に乗せ固定する。布団などを置いておくとよりいいですね。
立位
上肢をテーブルに乗せることや背中を壁につけ 前傾姿勢になります。歩行練習中や階段昇降中に息切れが強くなってきた際に、私は壁に寄りかかって呼吸するように指導しています。特に呼気を意識して行うようにしています。
・呼吸介助・排痰法は次回話しますね。
ポジショニング
下側(荷重側)肺障害
仰臥位を続けることにより肺の下側(背側)に生じる肺障害です。重力により気道分泌液が貯留して無気肺が生じ、シャント効果(血流は下方に多く、仰臥位では背部に多いですが、そこが分泌液で多くなると酸素と血液が交わることが少なくなってしまいます。)により酸素化能が低下します。すでに肺胞虚脱をおこしやすい肺障害がある患者様や筋弛緩剤投与下で調節呼吸を施行する患者様に発症しやすいです。評価には胸部CT検査が有用です。自発呼吸下の呼吸管理や頻回の体位変換で下側肺障害の発症を防止することもできます。治療には腹臥位呼吸療法が有効です。また一時的に高い気道内圧をかけて気道を開通させたのち,再虚脱を防ぐためのPEEP圧で管理するrecruitment maneuverが奏功する場合もあります。
もし、褥瘡を予防したければ側臥位30°の体交でいいですが、肺炎や下側肺障害の予防や治療効果がるのは、45°以上の側臥位で治療効果があるものは60°以上側臥位をとる必要があります。その中でもシムス位はよく治療として行います。私の病院では、鎮静して人工呼吸器を装着という患者様はいません。しかし、肺炎のリスクが高い人は多いです。そのため、シムス位やファーラー位を時間を決め行っています。日中は特にベッドでチルトアップしています。
シムス位 Sims’position
よく妊婦さんの安静時の体位で用いることがあります。
方法:クッションを2個と丸めたタオルを用意してください。
右側にシムス位をとる場合
①ベッド左側に体を寄せます。一気に持っていくことは腰痛の原因になります。頭・両肩・骨盤・足と分けながら左側に体を寄せましょう。
②患者様の右上肢と右下肢体側にクッションを置きます。
③顔を右に向け、左手をお腹の上に、左膝を立てます。
④左肩甲骨と左膝を介助者が右側に倒します。
⑤鎮静されている場合は、右手を体側から抜きます。鎮静されていないときは、右手はクッションの下に。
⑥右足関節部にタオルを入れてください。
⑦最後に服を整え、圧抜きをしてください。
実際のポジショニングをベッドの近くの壁に貼っておきます。体交時間とともに。こんな感じです。(↓下の図)肺炎の予防にも効果があるということは、脳梗塞等で嚥下機能の低下した患者様でも同様の体位をとって肺炎の予防をしています。
排痰体位も次回話しますね。
呼吸練習(Breathing exercises)
横隔膜呼吸 (diaphragmatic breathing)
閉塞性換気障害、拘束性換気障害、手術後など広く適応されています。しかし、COPDでは残気量が多く横隔膜が平定化しているため、励行は呼吸効率を悪化させ呼吸困難感が助長する可能性があるので横隔膜呼吸にこだわる必要はありません。
横隔膜呼吸の習得は、呼吸数の減少と1回換気量の増加、呼吸仕事量の減少をもたらし、呼吸困難の軽減が期待できます。
方法:ファーラー位・セミファーラー位で膝を軽度屈曲(曲げて)させ腹壁の緊張をとります。患者様の最も楽な姿勢がいいです。患者様は、胸とお腹に手を置き、術者の手は患者の手の上に置きます。腹部の手を押し返すように膨らませます。最大吸気位の状態を3秒保持させます。できればです。うまくできるようであれば、坐位・立位でも指導しましょう。容易に可能であれば、腹部に0.5~3.0㎏程度の重りをのせるabdominal pad法があります。吸気時に腹部の膨らむことに対する抵抗となり、呼気時には横隔膜を挙上しやすくなります。しかし、重すぎると横隔膜が下方へ押し返せず、1回換気量が減少し呼吸困難に陥ることもあります。荷重は徐々にとセラピストがついている中で最初は行いましょう。
口すぼめ呼吸 (pursed lip breathing)
主に閉塞性換気障害に行われます。閉塞性換気障害では、急速な呼気は抹消気道の狭窄と気道内圧の上昇による気道の虚脱を引き起こします。口をすぼめてゆっくり呼出することで呼気終末に陽圧をかけて気道の虚脱(下記の図)を防ぐことができます。COPD患者様が無意識に行っている呼吸法です。呼吸数の減少と分時換気量・機能的残気量の減少、1回換気量の増加、酸素飽和度の増加、呼吸困難感の軽減等が期待できます。
方法:患者様は楽な姿勢をしてもらう。呼気は口をすぼめて「f」または「s」という音をさせながら行う。「ふーorすー」っとはきます。吸気と呼気の比は1:3~5を目安にする。できる場合は横隔膜呼吸と併用して行います。ローソクの火を消す動作やストローと水の入ったコップを用意しゆっくりとはくこと、ピンポン玉を転がす、ティッシュを前に置き息を吹きかけるなどいろいろあります。また、最初から極端にゆっくり、長く息を吐かさないで、徐々に長くしていきましょう。また、呼吸音が聞こえるほど口をすぼめすぎないことも注意しましょう。
気道の虚脱:虚脱する気道のイメージはA4用紙を軽く丸めてその中に空気をいきよいよく吹いてください。用紙が縮むのがわかると思います。体の中でも同じようなことが起きるのですが、健康な気道は、縮みますが完全に閉じてしまうことはありません。しかし、よれよれの肺(COPD)では気道が狭くなるまたは完全に気道が閉じてしまいます。そこで口をすぼめて気道に陽圧をかけて肺内の空気を出す必要があります。COPDを体験したい方は、息を大きく吸って小さく吐くを繰り返してください。すごい苦しいですよ。吐けないって!!
呼吸介助・排痰法(Breathing Assist Technique Manual Chest Compression、Squeezing)排痰体位とともに次回話していきますね。今回の勉強で呼吸器の患者様が息切れ等で辛そうな時にどうすればいいか少しわかりましたかね。次も見てください。できるだけ詳しく話しますね。最後まで読んで頂きありがとうございます。
今日も過去の自分、文献等ありがとうございます。
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