今日は、視診について話していくよ。前回フィジカルアセスメントの問診を話しましたので、いよいよ視診です。いつも見ているようでしっかり見ていない。患者様をよく観察して症状を把握できるようにしていきましょう。私もしっかり勉強していきたいと思います。では早速行きましょう。
このブログでは、私が勉強してきたことや考え方、この治療ってどうなのかなとみんなが疑問に持っている事など(また趣味の筋トレとかも・・・)をなるべくわかり易く伝えていきたいと考えています。ぜひ読んでいってください。
フィジカルアセスメントとは
フィジカルアセスメント(Physical 身体の assessment評価)とは、問診とフィジカルイグザミネーション(examination調査:視診、触診、聴診、打診)を用いて、身体的健康上の問題を明らかにするために、全身の状態を系統的に査定することです。
フィジカルアセスメントの基本手順
フィジカルアセスメントは、患者の心身の侵襲を少なくするために、以下5つの手順でおこないます。
① 問診:患者の訴えを聞きます
② 視診:患者の全体を観察し、身体の機能も異常がないか確認します
③ 触診:患者に触れて皮膚などの状態や痛みの部分を正確に知ります
④ 打診:患者の身体の表面を叩いたり振動から内部の状態を知ります
⑤ 聴診:聴診器を使って呼吸音や心音、血管音、腸音などに異常がないかを聴きます
写真を見て(視診)何を感じますか
下記の写真の方々を見て何を感じますか。「あ~~~~次の日は仕事やだよ。」って思った人!日曜日の燃え尽き症候群に気を付けてあなた!!でも間違っていません、さすがです。日曜日の昼間の顔「アッコにおまかせ」の和田アキ子さんと「笑点」の司会者だった桂歌丸さん。どちらもCOPDの広報大使をしていましたね。3枚目の桂歌丸さんの画像をよく見てください。特徴が解ります。
あとは有名な写真です。↓双子姉妹は、カースティ(左)喫煙者、ケリー(右)非喫煙者が40歳をどんなふうに見えるかを示すために作られた顔です。左の女性は、顔の老化が著しい。この画像により喫煙者独特の顔貌である“スモーカーズ・フェイス”なる言葉が広がったそうです。喫煙により、顔のシワが増え、たるんだり、顔の色がくすんだりする。これは喫煙により活性酸素が発生し、細胞を傷つけ老化を速めるためです。また、抗酸化作用を持つビタミンCやEなど、細胞の若返りに必要なビタミン類が大量に消費されます。その結果として、肌の主要な構成要素であるコラーゲンが減り老化を早めると言われています。
ここからは、身体所見を書いていくよ。
呼吸数
成人12~20回/分 新生児40回/分
頻呼吸24回/分以上
徐呼吸11回/分以下
※呼吸不全の初期症状の一つは頻呼吸! 呼吸数が多くなると注意が必要です。
呼吸の深さ:一回換気量5~7ml/kg 成人では500ml程度(ペットボトル1本分)
肺胞表面積は約100m2になっています。「テニスコートの広さ」は約264m2(11m×24m) で、100 m2はテニスコートの約半分。 肺胞付近では「ガスの流れ」はほとんど存在せず、気体は分子で動く。一回換気量の500mlが2秒で動くとすると、1秒間の流速は250mlを100m2 で割るので、2.5μ/秒となる。これは分子拡散の速度に近い。一回換気量の増減や換気のパターンで、気道の死腔量も増減することが判明している。トランペット型のモデルで考えるほうがわかりやすいです。
過呼吸-換気数は正常で一回換気量が増加したもの
減呼吸-同様に減少したもの
正常呼吸
正常呼吸では、吸気終末に一瞬吸気位が保持されるこれを吸気ポーズといいます。呼気後には休止があります。
吸気と呼気の比:1:1(1:2)、COPDでは1:4
どの研修会か忘れましたが、講師が「あいうえお」を言うとき約1秒で言えると、呼吸の時間がわかるよと教えてもらい。例えば≫吸気の時に「あいうえおあいう」だったら1.6秒、呼気が「あいうえおあいうえおあい」2.4秒、1文字0.2秒で吸気:呼気の時間がわかり比も、1.6:2.4=2:3の比だなってわかると教えてもらいました。ストップウォッチ見て行うのは大変だからね。
呼吸の種類
クスマウル呼吸Kussmaul breathing、Kussmaul respiration
深く速い呼吸が規則正しく持続する異常呼吸です。一見して苦悶(苦しみもだえること。もがき苦しむこと)した状態を呈する呼吸様式です。クスマウル大呼吸とも言います。深く速い呼吸により肺胞換気量を増加させ、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)を低下させて、代謝性アシドーシスを補正しようとする生体反応による代償性の呼吸です。呼吸リズムの乱れや無呼吸はみられません。尿毒症や糖尿病性ケトアシドーシスなど代謝性アシドーシスの患者にみられ、ドイツの内科医アドルフ・クスマウル(Adolf Kussmaul)が、糖尿病性ケトアシドーシスの患者に特有な異常呼吸パターンの存在を発見したことにより、クスマウル呼吸と命名されたそうです。
【糖尿病患者にみられるクスマウル呼吸】
I型糖尿病では自己免疫により膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンが正常に分泌されなくなる。インスリンが分泌されないと細胞は糖を利用することができず、エネルギー不足に陥ってしまう。その結果として、糖以外のエネルギー源である脂肪組織の脂肪を分解し、骨格筋のタンパク質も分解する(糖新生)。肝臓では糖新生とグリコーゲンの分解により血中へ糖が放出され、ケトン体の産生も亢進し血中へ放出される。ケトン体は酸性物質なので、次第に酸塩基平衡が破綻してアシドーシスとなる。こうした代謝性アシドーシスに対して、酸塩基平衡を保つために深く速い大きな規則的な呼吸により二酸化炭素濃度(PaCO2)を減らしてアルカリ化しようとするので、クスマウル呼吸となる。
チェーン・ストークス呼吸Cheyne-Stokes respiration
呼吸が徐々に増大と減少を繰り返し、最も減弱したときにしばらく停止しているような周期的な異常呼吸です。まず数秒から数十秒の無呼吸がみられ、その後浅い呼吸が始まり、徐々に深い呼吸となります。その後再び浅い呼吸に戻って呼吸停止となります。このサイクルを30秒から2分程度で繰り返すことが多い。正常呼吸の換気量は、延髄の呼吸中枢にある化学受容器で感受されている動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)によって主に調節されている。何らかの原因により、この動脈血二酸化炭素濃度分圧が高い状態が続くと、重度の呼吸性アシドーシスとなり、pHの低下とCO2の鎮静作用により、意識障害と呼吸中枢の感受性低下による自発呼吸の減弱が生じ、二酸化炭素ナルコーシス(炭酸ガスナルコーシス、CO2ナルコーシス)という状態になる。意識が明瞭な時は、頻呼吸や努力呼吸で酸素を取り入れようとするが、睡眠時や意識レベル低下時は、より動脈血二酸化炭素分圧が低下した状況にならないと呼吸が必要だと判断されなくなる。少しずつ呼吸が大きくなり1回換気量が増えると、脳がこれ以上の酸素は必要ないと勘違いを起こす。すると呼吸が小さくなり無呼吸状態になり、これを繰り返してしまう。
このチェーンストークス呼吸を繰り返すうちに、二酸化炭素(CO₂)ナルコーシスがさらに進み、意識レベルは低下して朦朧状態となり、意識消失による舌根沈下や窒息、呼吸のさらなる低下から呼吸停止につながり死に至ることもある。チェーンストークス呼吸が見られる疾患としては、中枢神経疾患、アルコール中毒、モルヒネ中毒、脳血管障害、心不全、腎不全(尿毒症)、各種疾患の末期などにみられます。
私の患者様でも、重度の脳血管障害の方がこのチェーン・ストローク呼吸に覚醒が低い際に出現していました。パルスオキシメータでモニタリングすると呼吸をしているときは、95%以上であるが呼吸の減弱・停止が起きると90%以下となっていました。
ビオー呼吸 Biot’s respiration
頻呼吸と無呼吸を不規則に繰り返す失調性呼吸(Chyne-Stokes呼吸より周期が短く、不規則)です。原因としては、中枢神経系疾患(特に橋と延髄の外傷、圧迫、血管障害)がある脳炎、脳腫瘍、髄膜炎など頭蓋内圧亢進による圧迫や脳卒中(脳血管障害)などによるものが多い。橋と延髄の病変でビオー呼吸が起こるのは、呼吸をコントロールしている呼吸中枢が橋と延髄付近にあるためである。
ビオー呼吸の治療法は、原因となる疾患の治療を行うことで、症状を抑えることができるといわれているが、いずれも重篤な疾患であることが多く、ビオー呼吸自体が重篤な疾患の症状の一つであります。
呼吸中枢の障害:Cheyne-Stokes呼吸では大脳皮質下や間脳、Biot呼吸では延髄の障害が示唆される。
その他にもこんな呼吸があるよ↓
口すぼめ呼吸
口すぼめ呼吸は、鼻から息を吸った後、口をすぼめて(Fの形)長く息をはく呼吸法です。COPDでは呼吸をするたびに肺の中にはき出せない空気がたまって息苦しくなりますが、口をすぼめて息をはくと、気管支の内側に圧力がかかり、呼吸が速くなっても気管支のつぶれを防ぎながら、空気を効率よくはき出すことができます。
奇異呼吸(陥没呼吸・シーソー呼吸seesaw breathing)
陥没呼吸は、喘息などの呼吸不全時に起こり、上気道や気管支が閉塞した場合に起こります。閉塞した時に、呼吸に使う筋や横隔膜、肋間筋以外を多く使う呼吸を努力性呼吸といいます。この努力性呼吸のために下気道に圧が生じ、息を吸うときに胸骨の上や鎖骨の上が陥没します。さらに発作が悪化した場合、肋骨が陥没することもあります。このような症状を陥没呼吸といい主に乳児や小児にみられます。
上気道の閉塞や狭窄なので、鼻翼呼吸を強制的に行うと同様の症状を作れます。口を閉じて大きく鼻で息を早く吸ってください。首の筋肉が張り、胸郭が上方に持ち上がり、お腹がへこむと思います。患者様でこのような症状が起きたらすぐに対応しなければいけませんね。私はこのような症状の患者様を見たことがありませんが、他病院のPTの大先輩が教えてくれました。ありがとうございます。
Hoover徴候(Hoover’s sign)
肺気腫病変が進行すると肺の過膨張によって横隔膜が平低化し,吸気時に横隔膜の収縮に伴って側胸壁が内方に陥没する。この徴候をフーバー徴候(Hoover’s sign)と呼び,重篤なCOPDの特徴とされています。
死戦期呼吸(gasping respiration)
急な心停止で意識を失った際などにみられる状態。下あごや鼻が不規則に動くが、肺には空気が送られず、正常な呼吸活動は行われていない。現場や救急室では「ギャスピング」ということが多い。呼吸をしていないので、なるべく早期の胸骨圧迫(心臓マッサージ)や人工呼吸、AEDによる蘇生を要する状態です。心肺蘇生法(cardiopulmonary resuscitation; CPR)
英語では以下をすべて死戦期呼吸と呼びます。
gasping respiration (あえいでいる呼吸)
agonal respiration (死期の苦しみの呼吸)
agonal breathing (死期の苦しみの呼吸)
胸郭の動き
左右の胸郭の動きは同じか 。どっちかの胸郭の動きが小さくもしくは大きくなっていないか。
動きが小さいほうが、無気肺になっていたり、変形や麻痺によって動きが小さくなっていないか。
上部胸郭と腹部の動きはどうか。(腹式優位か胸式優位の呼吸かが解りますね。)
女性は腹筋群や衣服の関係で、横隔膜の上下運動をしなければならない腹式呼吸が行いにくくなり、胸式呼吸の傾向が強くなると言われています。また、妊娠時に胎児の成長で横隔膜が圧迫されると腹式呼吸が難しくなり、胸式呼吸に傾くようになります。男性は、腹筋群が発達しているので腹式呼吸の傾向が強くなりがちです。
変形について
胸郭外所見
顔面 : 表情、眉間のしわ 、スモーカーズ・フェイス
鼻 : 鼻翼呼吸
口腔 : 口呼吸(下顎呼吸),乾燥状態,口腔衛生
頚部 : 呼吸補助筋の活動・肥大,頚静脈怒張 tracheal tug(吸気時に喉仏が下方へ移動)
四肢 : 筋緊張,浮腫,ばち状指,手指・口唇チアノーゼ(低酸素症状)
体幹 : るい痩(そう)、体幹の浮腫
皮膚 : 光沢、色調
腹部 : 呼気時の腹筋収縮
おわり
今日は、ここまでです。症例も紹介させていただきました。勉強になります。
視診だけでもいろいろなことが解りますね。
見ているようで見ていない部分が多いです。患者様を治療しているときは目を離さないで!!自分に言い聞かせます。今日もありがとうございました。次回は、触診!!しっかり勉強していきましょう。
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