今日は、ACO? ACOS?って何?です。COPDや喘息を勉強している方は知っている人が多いと思いますが、知らない方は、今日一緒に勉強しましょう。知っている方は、復習と私にアドバイスをよろしくお願いいたします。では、早速行きましょう。
このブログでは、私が勉強してきたことや考え方、この治療ってどうなのかなとみんなが疑問に持っている事など(また趣味の筋トレとかも・・・)をなるべくわかり易く伝えていきたいと考えています。ぜひ読んでいってください。
ACOとは
喘息と慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は、ともに閉塞性呼吸器疾患に分類されます。
喘息:主に好酸球やCD4+リンパ球による気道炎症であり、気道過敏性が亢進し、気道粘膜浮腫、気道平滑筋の収縮による可逆的気道閉塞を起こし、発作性の呼吸困難、喘鳴、咳嗽を繰り返すのが特徴です。
COPDは、喫煙を主体とする有害物質を長期に吸入することで生じた好中球、CD8+リンパ球を主とする炎症により、肺の気腫化(肺胞の組織が壊れ、肺にたまった空気が押し出せない状態)、細気管支線維化から不可逆的な気流制限をきたし、労作時呼吸困難や慢性咳嗽、喀痰を生じる病態です。
両者の鑑別は、特に喫煙者や高齢者では難しいことがあり、両者の特徴を持ち合わせた患者群がいます。2014年に開かれたglobal initiative for asthma(GINA)とglobal initiative for chronic obstructive lung disease(GOLD)の合同会議では、両者の病態・特徴を併せ持つ固定性気流閉塞を呈する患者群に対して、「喘息COPDオーバーラップ症候群(asthma-COPD overlap syndrome:ACOS)」という、新たな疾患を提唱しました。その後、”症候群”は原因不明(原因が判明後も使用する場合がある)で共通の病態の場合に使用される言葉であることで、喘息もCOPDも単一ではなく様々な機序によって病態が形成され、臨床的特徴も多様性を認める疾患であることからなどから、”症候群、syndrome”という言葉はふさわしくないと”症候群”が外れ、ACOと改名されました。喘息とCOPDは、お互いが他方の発症危険因子であり、両者の合併したACOでは増悪の頻度が高く、QOLも低く予後は悪いとされています。
好酸球
白血球の一種で、アレルギー反応、喘息(ぜんそく)、寄生虫感染に対する身体応答で重要な役割を果たしています。好酸球は、ある種の寄生虫に対して体を守る免疫機能を担っています。
CD4+リンパ球
白血球の一種で、感染症から体を守る働き(免疫)の中心的役割をしている細胞です。樹状細胞により提示を受けた特異的抗原に遭遇すると活性化します。健常人ではCD4陽性リンパ球数は700〜1300/μl程度ありますが、HIVがCD4陽性リンパ球に感染し、徐々にCD4陽性リンパ球を破壊していくことにより免疫能が低下してしまいます。
好中球
好中球は主要な食作用性顆粒球であり、すべての循環白血球の最大60%を占めています。好中球は、顆粒を放出し、サイトカインを産生し、感染部位への他の免疫細胞の動員を介することにより、免疫応答を促進します。一方、免疫応答が悪化した場合、好中球は、広範な細胞死、壊死、血管漏出、血栓形成、および抗体を介した自己免疫応答など宿主にかなりの障害を及ぼす可能性があります。
CD8+リンパ球
CD8+T細胞と呼ばれることの多い細胞障害性リンパ球(CTL)は、適応免疫系の重要な構成要素であり、ウイルスや細菌などの細胞内病原体や腫瘍に対する免疫防御に重要な役割を果たします。
喘息とCOPDの特徴
診断のアルゴリズム
40歳以上で喫煙歴があり、スパイメトリーで気流閉塞(一秒率FEV1.0%<70%)あるいは慢性の咳痰、息切れ等の臨床症状で訪れる患者様に対して、身体所見、胸部X線撮影によってびまん性汎細気管支炎、先天性副鼻腔気管支症候群、閉塞性汎細気管支炎、気管支拡張症、結核、塵肺症、リンパ脈管筋腫症、うっ血性心不全、間質性肺疾患、肺癌等の閉塞性換気障害を来たし得る疾患を除外します。その後、短時間作用性β2刺激薬吸入後のFEV1.0%を測定する。FEV1.0%<70%の場合には、「ACOの定義」に記載されている「COPDの特徴」と「喘息の特徴」について、問診及び該当項目を検査します。診断基準に従って、喘息の特徴とCOPDの特徴を併せ持つ場合をACOと診断します。
ACOの診断手順
慢性の気流閉塞
慢性の気流閉塞とは、スパイトメトリーで短時間作用性β2刺激薬(SABA:Short Acting Beta2 Agonist)吸入後の1秒率(FEV1.0/FVC、FEV1.0%)が70%未満を意味します。
SABA:Short Acting Beta2 Agonist
- 気管支をすばやく広げ、呼吸を楽にして咳や喘息発作などを和らげる薬
- 喘息では気管支の炎症により気道が狭くなっていて、咳の発作や息苦しさなどがあらわれる
- 気管支の交感神経β2受容体を刺激すると気管支が広がる
Pack-years
Pack years=1日の喫煙箱数×喫煙年数。例えば10年間1日1箱吸っていたら・・・・Pack years10です。
ブリンクマン指数Brinkman index
ブリンクマン指数=1日の喫煙本数×喫煙期間 例えば10年間1日20本吸っていたら・・・ブリンクマン指数=200
症状
ACOの症状は主に咳、痰、喘鳴、息切れ、呼吸困難であり、いずれも慢性気道疾患に共通しており、特徴的なものはないです。ただし、ACOではCOPD、喘息単独患者に比べてこれらの症状がより強く頻度も高いことが知られています。発症時期や症状パターン、持続性、経過や長期予後、トリガーなどが診断の糸口となるため詳細な問診が重要であります。なので、気管支喘息らしいとCOPDらしい症状を挙げ、ACOの診断の糸口となるといいですね。
喘息らしい症状
”喘息予防・管理ガイドライン2015”では診断の目安として6項目を示しています。そのうち「発作性の呼吸困難、喘鳴、息苦しさ、咳(夜間、早朝に出現しやすい)の反復」が、症状の診断の目安となっています。トリガーとしては、ダニや花粉への暴露などがあるため、日内だけでなく、週・月あるいは季節性の変動が生じやすい。また大笑いや悲しみなどの感情、月経、過労などによっても症状が生じるのも特徴のひとつであります。自然にあるいは治療により改善するのも喘息症状の特徴であり、短時間作用性β₂刺激薬(SABA)吸入で即座に、吸入ステロイド薬(ICS:inhaled corticosteroid抗炎症効果)では、週単位で症状が改善することが多いです。
COPDらしい症状
COPDでは慢性的な咳、痰、特に労作時に生じる慢性の息切れ、呼吸困難などの症状が主である。慢性の痰については、「風邪をひいていないのに痰が絡むこと」や「朝起きてすぐ痰がからむこと」(IPAG質問票)があり、「咳をしたとき、粘液や痰」が出ることが多いです。また、労作時呼吸困難があり、mMRCで評価されます。
COPDの症状には明確なトリガーはなく、大きな変動には乏しいです。主に感染による増悪があり、症状も一時的に悪化することがあります。一般的に治療しても年単位でゆっくり進行・悪化するのも特徴です。
ACOの重症度分類
ACOの重症度判定は、「喘息予防・管理ガイドライン2015」で示されている重症度分類と『COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第5班』で示される病期分類からACO重症度をグレード1から4に分類します。その際喘息の重症度分類とCOPDの病期が一致しない場合は、より重度の高い(あるいは、より病期が進行した)ほうが採用されます。
治療
ACOの明確な診断基準というものはなく、症候学的にACOと判断されれば直ちに初期治療を開始します。診断時点で吸入ステロイド(ICS:inhaled corticosteroid)が未投与であればICSの導入を行います。同時に気管支拡張薬として長時間作用性β₂刺激薬(LABA:long-acting β-agonists)や長時間作用性抗コリン薬(LAMA:long-acting muscarinic antagonist)を追加します。
薬剤名や容量も書いてありましたが、私は医者ではないのでここまでとします。もっと知りたい方は、本を購入したり、医師に相談してくださいね。↓
治療効果の判定
治療効果判定には、客観的な指標としてAthma Control Test(ACT)、Asthma Control Questionnaire(ACQ)、COPD Assessment Test(CAT)、mMRC息切れスケール、修正Borgスケール、Visual Analogue Scale(VAS)スパイロメトリ-(1秒量:FEV₁、1秒率:FEV₁/FVC)、最大呼気量(ピークフロー:PEF)の測定、または、モストグラフィック、FeNO、末梢血好酸球数(%)、増悪頻度、動脈血液ガス分析、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO₂)の測定、6分間歩行試験なども必要に応じて実施します。
理学療法士でも客観的に検査できますね。私はCOPDの症状がある患者様を診ることが多いので、CATや修正Borgスケール、もちろん6分間歩行、SpO₂などは主に検査して、入院時からチェックをしています。経過を診て提示することで、客観的に良くなっている、悪くなっていることが解りますね。
今日のおさらい
🌟喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)を『慢性の気流閉塞を示し、喘息とCOPDのそれぞれの特徴を併せもつ疾患である』と定義する。
🌟咳、痰、呼吸困難を訴える他の疾患を問診、身体所見、胸部単純X線画像などで除外したうえで、喘息、COPD、ACOを診断するために、呼吸機能検査、血液検査を実施し、喘息の特徴とCOPDの特徴を参考に診断する。
🌟ACOは喘息あるいはCOPD単独の場合と比べて増悪しやすく、また、呼吸機能低下も著しい。
🌟治療は中用量の吸入ステロイド薬(ICS)と長時間作用性β₂刺激薬(LABA)の配合剤、あるいは中用量のICSと長時間作用性抗コリン薬(LAMA)で開始する。
今日はここまでです。本当に知らないことが山ほどあります。少しずつ一緒に勉強できるといいですね。最後まで読んで頂いてありがとうございます。また読みに来てください。
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