今日は、SPPBです。そんなの知っているよという方は復習的に、初めましての方一緒に勉強していきましょう。心リハの勉強会では、よく知っている人が多いでしょうか。私も何年か前に順天堂大学の高橋哲也先生の講義を受けた際にSPPBを知りました。今では臨床で使用して、リハにも活かしています。では早速勉強して行きましょう。
このブログでは、私が勉強してきたことや考え方、この治療ってどうなのかなとみんなが疑問に持っている事など(また趣味の筋トレとかも・・・)をなるべくわかり易く伝えていきたいと考えています。ぜひ読んでいってください。
SPPB(Short Physical Performance Battery)って何
Short Physical Performance Battery(SPPB)は、高齢者の下肢機能を評価するための客観的な評価ツールです。これは、米国の国立研究所(Jack M.Guralnik,Md,PhDなど)によって開発され、許可やロイヤリティ(royalty:特定の権利を利用する利用者が、権利を持つ者に支払う対価のことで、主に特許権、商標権、著作権などの知的財産権の利用に対する対価)料なしで使用することができます。Hadar Gilad博士がYouTubeでの実際の映像を作ってくれていますので下記を参考にして下さい。
SPPB Balance Tests バランステスト
①閉脚立位(Side-by-Side Stand)
両足を付けた状態で10秒保持できるか。
②セミタンデム立位(Semi-Tandem Stand)
片足の踵ともう片足の親指を付けた状態での立位10秒保持できるか。
③タンデム立位【Tandem(Heel-Toe)Stand】
片足の踵ともう片方のつま先を付けた状態で10秒保持できるか。
①⇒②⇒③の順番で検査します。①と②ができない場合は、歩行テスト(Gait Speed Test)に進んでください。
私の資料では、セミタンデム・タンデム立位で両側共に前を出す方法を記載できるように資料を作成しました。どちらでもできるのか。それとも片方ができないのかなどの評価ができるので、私はいつも両側とも行っています。患者様が行いやすくタイムがいい方を記録とします。足は動かしてはいけませんが、膝を曲げたり・両手を揺らしても問題ありません。テスト時、被検者が転倒しないように、検査者はなるべく近くでいつでも助けられるような場所にいましょう。私は、環境面の設定でいつでも掴めるもの(手すりや机)があるような場所や急に座り込んでもいいように後ろには車椅子・椅子・ベッドがある場所で行います。ただ、手すりや車椅子に触らないように注意をしてください。
SPPB Gait Speed Test 歩行テスト
通常の歩行スピードで4mを何秒で歩けるかをチェックします。杖や歩行器を使用してもいいです。しかし、しっかり記載していてくださいね。まず、つま先を線に合わせて立ちそこからスタートします。体が4mのマークを完全に通過したらタイムを押します。2回行いタイムが短いものを採用します。検査者は、被検者が転倒しそうになった時、いつでも助けられる位置に少し後方から監視してください。
4.82秒未満 :4点
4.82~6.20秒:3点
6.21~8.70秒:2点
8.70秒以上 :1点
実施困難 :0点
SPPB Chair Stand Test 椅子立ち上がりテスト
Chair Stand Testは、できるだけ早く起立-着座を反復して行い、最後に立ち上がった時のタイムを計ります。立ち上がりの際は、両手を使わずに前で手を組んだ状態で行います。高さは通常の椅子の高さなので40㎝くらいです。検査者は、患者様の前に立ちいつでも助けられるようにします。あまり前にいすぎると立ち上がりの邪魔になるので、私は左や右横で監視しながら行ってます。1分以上検査が行われている場合は、途中で中止するか検討が必要です。環境面では、椅子が動かないように壁に椅子を置いた状態か、動かないベッドなどでも代用できます。
11.19秒未満 :4点
11.20~13.69秒 :3点
13.70~16.69秒 :2点
16.70秒以上 :1点
60秒以上、実施困難:0点
すべての動画をみたい方はこちらをどうぞ。こちらをどうぞ⇒(8) Short Physical Performance Battery – YouTube
SPPB・BASEの評価の解釈
入院患者様の初期の場合SPPBの点数が0点の方が多いです。そのため、下記の表↓を使用すると今どのくらいの能力で、今後どんなリハビリを行っていけばいいか解りやすいですね。SPPBはBalance、4m歩行、5回立ち上がりの3つの合計で評価します。それに加えEdurance(持久力)も一緒に見るとその方の能力がよりわかりますね。こちらの表は、順天堂大学 高橋先生の講義から引用させてもらいました。6分間歩行について知りたい人はこちらをどうぞ。6Minutes Walking Distance Test(6MWDT)6分間歩行!!! | まなびPT (sinji0012312.com)
片足立ち10秒以上
開眼で両手を腰に当てた姿勢で片足を地面より5 cm程度上げ、そのまま 60秒間保持可能かどうかを測定する。
開眼片脚立位では「15秒未満」で運動器不安定症のリスクが高まる。
閉眼片脚立位では「5秒以下」、開眼片脚立位では「20秒以下」で転倒リスクが高まる(参考文献:PTジャーナル 2009,9 高齢者の運動機能と理学療法)
年齢別のカットオフ値
40歳以上:180秒
60歳代 :70秒
80歳代 :10秒
4m歩行4秒未満
10m10秒(1.0m/sec):高橋精一郎,鳥井田峰子・他:歩行評価基準の 一考察-横断歩道の実地調査より.理学療法学 16:261-266,1989.
横断歩道を渡るには、だいたいこの速さじゃないと渡れないとされています。ということは、SPPBの歩行速度も同じではないかと考え、4m4秒未満で歩けるといいですね。
5回立ち上がり(Sit to Stand-five test:SS-5)9.2秒未満
Bohannonは 11.4 秒(60-69歳)、12.6 秒(70〜79 歳)、14.8 秒(80〜89 歳)以上を機能低下と報告されています。またBuatois らは良好な健康状態の 65 歳以上の被験者から、転倒のリスクを 15 秒以上と報告されています。Guralnik らは障害を予測する下肢機能の評価として、13.7 秒以上を平均値以下とした。牧迫らが虚弱高齢者における妥当性と、大規模調査で 8.15 秒以上を平均値以下と報告しています。
6分間歩行(6Minutes Walking Distance Test:6MWD)
内藤らは、入院高齢心不全患者の 6 分間歩行距離は転倒リスクの有無を推定するとして6MWD の cut-off値は 328m と報告しています。Cahalin らは、 6MWD が300m 未満の心不全患者の死亡率や再入院率が不良であったことを報告しています。吉田らは、自宅退院した自立歩行が可能な脳卒中患者を対象に、退院後の屋外活動に関するカットオフ値を退院時の身体的因子より明らかにした。自宅退院後において屋外活動を維持および向上させるためには、入院中の 6MD において約 350 m 以上の歩行距離が必要であると報告しています。田代らは脳卒中患者を対象とした屋外活動の可否を判別するためのカットオフ値を、6MWD は 210 m の歩行距離が必要であると報告されています。
名前をクリックすると文献に飛びます。
当院の通所リハビリでもSPPBを全利用者様に行ってました。簡易的ですけど、とっても重要です。また、整形や脳血管障害、内部障害の疾患を持っている方たちとどんな疾患の方でも評価できるため、絶対に行った方がよいテストです。どの時期の状態でも把握できますので、安全な方法で行ってくださいね。
今日はココまでです。最後まで読んで頂きありがとうございます。また、遊びに来てください。一緒に勉強をしましょう。
コメント
いつも勉強させていただいてます。よく400メートル歩行テストというのも目にしますが、SPPBで例えば中間機能群(3-7)のような患者さんはそもそも400メートルも歩けるような状態なのでしょうか?
通りがかりさん。コメントありがとうございます。6分間歩行400m未満の患者様のことでしょうか?よく6分間で400m歩けると歩行自立・外出可能とされています。SPPBが7点以下の方は転倒の危険性も高くなるとの文献もあり、6分間歩行で400mは無理ではないでしょうか。ただし、400mを何分かけてもいいから歩けるかでは、歩ける可能性はあります。もし6分間歩行200mでその60%の運動を20分(200×10×0.6÷3)行うと400m歩けることになります。歩行車・杖などの歩行補助具を使ってもいいとします。 こんな回答でいいでしょうか。他にも文献等ありましたら教えていただけると幸いです。一緒に勉強していきましょう。