前回、呼吸理学療法のコンディショニングでリラクセーションと呼吸練習、胸郭可動域練習、ストレッチングについて話しましたね、今回はいよいよ呼吸介助・Squeezingです。みなさん、呼吸リハと言ったら呼吸介助でしょ!と思ってますよね。私も思っていました。でも、呼吸介助を知る前に肺の位置やフィジカルアセスメントを知らないと本当に意味がないものになってしまいます。この記事を見る前にクリックして復習しておいてください。では早速行きましょう。
このブログでは、私が勉強してきたことや考え方、この治療ってどうなのかなとみんなが疑問に持っている事など(また趣味の筋トレとかも・・・)をなるべくわかり易く伝えていきたいと考えています。ぜひ読んでいってください。
呼吸介助法Breathing Assist Teqnique、Manual Chest Compression
徒手的に胸郭運動を他動的に解除することです。患者の胸郭に手掌面を当てて、呼気に合わせて胸郭を生理的な運動方向に合わせて圧迫し、次の吸気時には圧迫を解放することを繰り返すことです。
呼吸介助の前に胸郭の動き
私の肺の動きも載せておきますね。どんな動きをしてますかね。
上部胸郭(第1~5肋骨):Pump-handle motion ジブリ「トトロ」のさつきが水を出していたあれです。あの取っ手のような動きが上部胸郭の動きです。
下部胸郭(6~12肋骨):Bucket-handle motion 「ポニョ」を捕まえたときのバケツの取っ手のような動きです。
ご自身でも肋骨に手を置いて感じてみてくださいね。
コンディショニングとしての呼吸介助
呼吸介助法の目的は、呼吸仕事量の軽減、一回換気量の増大、呼気流速の増大があります。
効果
①肺酸素化能の改善:PaO₂(動脈血酸素分圧)の改善
②呼吸困難感の軽減:息切れ等の改善
③喀痰移動の促進:痰がでやすくなります
④胸郭の可動性改善:胸が柔らかくなります
全体に言えることは呼吸の評価にもつながります。
呼吸介助で本当に1回換気量が多くなるのか。それは、安静時の呼吸より2倍ほど1回換気量が改善し機能的残気量も低下しています。
呼吸介助の禁忌
換気の改善が期待できない場合。
絶対的禁忌:胸郭の広範な熱傷による植皮術後
相対的禁忌:循環動態の不安定な患者(循環動態を簡単に:循環は心臓・血管・循環血液量の3つの要素によって構成されています。 循環機能はこの3要素を統合して全身の臓器に血液を循環させる機能のことで、3要素のうち一つでも機能が破綻すれば、循環機能全体が不全をきたします)
多発肋骨骨折(フレイルチェスト:交通事故などで3本以上の肋骨が折れ、正常な呼吸ができなくなる状態)
離開した術創の存在
脆弱化した皮膚
骨粗鬆症の合併(骨折の危険性あり)
呼吸介助方法
①呼吸のリズムと運動方向の動きの確認、痰の位置の確認をラトリング(rattling)にて行う。呼吸介助は、胸郭の柔軟性や拡張性を評価できます。
ラトリング:気道内分泌物があるとき胸郭に手を置くと触覚振盪により、振動が確認されます。上部胸郭は、鎖骨下に両手を大きく広げて両胸に触診します。下部胸郭は、剣状突起部に母指を置き両手を広げて胸郭の側面に触診します。Total contact:全面接触します。一部だけ力を入れてはダメです。特に母指球や小指球に力を入れがちです、指に意識して呼吸介助を行うと均等に圧を加えることができます。
②患者様の呼気に合わせて、呼気の胸郭運動方向に押していきます。その際、腕で押すのではなく、体を前に出しながら治療者の体を移動して行うといいですね。また、治療者の肘は軽く曲げて体重をすべて患者様にかけないように意識してください。どうしても手のひらだけで押してしまうので、指に意識して押すことで一か所に集中して圧を加えることが回避できますよ。
③終末呼気まで介助を行い、患者様が吸気に移ったら速やかに圧迫を解放します。
動画で見たい場合は、eラーニング受講のおすすめ:一般社団法人日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 (jsrcr.jp)で動画も出しています。一緒に勉強しましょう。
パニックコントロール(Panic control)
運動・労作時に呼吸困難や浅速呼吸が起きたときに安楽体位や呼吸法を用いて呼吸調整をします。
①安楽体位をとります。(前回のブログを見てください。)
②呼吸法で呼吸のコントロールをします。口すぼめ呼吸→→→横隔膜呼吸
③呼吸介助も併用(胸郭外胸部圧迫法)する。
気管支喘息などは、医学的処置も考慮する(薬)
坐位などの呼吸介助ですね。
スクイージング(Squeezing)
Squeezingの日本語訳では「絞る」と書いてあります。
スクイージングの定義:排痰体位をとり気道内分泌物の貯留する胸郭を呼気時に圧迫し、吸気時に圧迫を解放する手技。通常は体位ドレナージで用いられる排痰体位と併用するため、徒手的な排痰手技に位置付けられています。
*気道内分泌物が貯留している肺葉、あるいは肺区域に相当する胸壁上に限定して行う。
*気道内分泌物が貯留していない場合は適応ではない
排痰体位(postural drainage position)
ではこの体位で呼吸介助をしましょう。ってこれはまず取れない姿勢の方が多いですよね。
なので、肺の区域と修正体位排痰現在はこのような体位をとります。
Squeezingの方法
目的とする肺野の位置する胸郭に手を置き、呼気の間に胸郭の動きに合わせて圧迫します。局所的な圧はさけ、接触面を多くとります。呼気終末に圧が最も強くなるように、最大吸気位から徐々に圧を加えていきます。介助をする際、肘を伸ばし体重をかけるのではなく、肘を曲げ術者が前後に動くことで接触面全体で圧を加えます。
右上葉(背臥位:仰向け)
術者は、右上方に立ち鎖骨下に手を置き、呼気の際に介助を行う。前上方に吸気が行われます。吸気と同時に開放します
右中葉(半側臥位45°)
術者は、後方に立ち肩甲骨下角(止め)と第4~6肋骨に手を置き呼吸介助を行う。胸郭に対して垂直に手を持っていくため、肘はなるべく曲げて行ってください。女性の患者様の場合は胸があるので胸骨側から胸を避けて手を置いてください。
右外側肺底区(側臥位)
中腋窩線上に両母指を置き第8肋骨より上に手を置き呼吸介助を行います。外側方向・前後方向の動きを助けるように行います。無理やり半円をえがくのではなく、介助をしていったら半円を描くようになっているように行ってください。
画像では、わかりやすいように、術者は臀部側にいますが、実際は後方の体側に立ち行います。
右後肺底区(腹臥位orシムス位)
背部では第10肋骨より上に左手を置き、外側に右手を置きます。後方・外側方向の動きで可動域は小さいですので、介助をする際は胸郭の動きを見てから行ってください。外側から圧を加える際は、難しいので膝を使用して行うこともあります。
Squeezingの注意点
最大呼気まで絞り出すような過度な圧迫は胸腔内圧を著しく上昇させ、気道閉塞や肺胞虚脱の原因となる危険性も指摘されています。また一回換気量が増加し,呼気終了と同時に吸気を促すこれらの手技は、吸気初期に過剰な経肺圧(気道内圧から食道内圧を引いた値)を生じ圧損傷を生じる可能性も考えられると文献があります。(CiNii 論文 – Pressure-volume loopからみた呼吸介助法の特徴について)
最後まで吐ききり、呼吸介助するのではなく、自然な呼気を少し補う呼吸介助を今の私は行っています。昔、呼吸の第一人者の伊藤直榮先生に教えてもらった呼吸介助が「え!こんなに優しくていいの?」と思いましたが、楽にはけるんですよねこれが!!やっぱりすごい人でした。20年近く前に研修会で長野に行った際のことを思い出しました。技術講習会の開催 – 日本肺理学療法研究会 (sakuraweb.com)
今日の勉強はここまでです。最後まで読んで頂いてありがとうございます。
次回は、排痰についてもう少し話をしていきますね。
また、遊びに来てください。
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