COPDとフレイル・サルコペニアの関係!!

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こんにちは!!今日は、COPDフレイルサルコペニアの関係についてです。以前もフレイルについて話しましたが、今回はCOPDの患者様とフレイル・サルコペニアの関係について話していくよ。最近出た研修会の復習です。皆さんもCOPDの患者様を担当したときは、フレイルやサルコペニアに対して要チェックや!!運動療法だけでなく栄養の大事さも解りますよ!!では早速行きましょう!

このブログでは、私が勉強してきたことや考え方、この治療ってどうなのかなとみんなが疑問に持っている事など(また趣味の筋トレとかも・・・)をなるべくわかり易く伝えていきたいと考えています。ぜひ読んでいってください。

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COPDって

COPDとは、慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)慢性気管支炎肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病といえます。呼吸機能検査で気流閉塞を示します。

気流閉塞:抹消気道病変と気腫性病変が様々な割合で複合的に関与し起こります。臨床的には徐々に進行する労作時の呼吸困難慢性の咳・痰を示します。

参照:Treatable traits

COPD患者の筋委縮

安定したCOPD患者様は、筋肉の萎縮、筋繊維の構造変化が認められます。それは、oxidatibe capacity (酸化能)の低下ミトコンドリアの機能異常を起こし、エネルギー代謝に変化をもたらし、これらの変化により筋力が低下します。この骨格筋機能障害は、下肢筋、特に大腿四頭筋に認められることが多く。下腿の筋肉にも異常が認められます。上肢筋肉は、比較的保たれるとする報告が多いです。

酸化能の低下・ミトコンドリアの機能異常

大腿四頭筋の筋肉生検の結果から、COPD 患者の筋線維のミトコンドリアの密度は低下しておりMaltaisらは、ミトコンドリアに含まれている好気性代謝に関係する酵素、citrate synthase(CS)(クエン酸回路の第一段階の速度を調整する酵素)、3-hydroxyacyl-coenzyme A dehydrogenase(HADH、β 酸化に関係する酵素)、cytochrome oxidase(電子伝達系の最後の酵素)の低下を報告している。それに対して、解糖系の酵素(phosphofructokinase, LDH)活性は,増加していたとの報告がなされている。これらの結果は、ATP(アデノシン三リン酸) の産生が、酸素を用いる好気性代謝から用いない解糖系(glycolytic pathway) へシフトしている可能性を示唆していると言われています。

よく解んないですが、酸素を必要としない嫌気的解糖系酸素を必要とする好気的解糖系があり、いずれもATPを産生しています。COPDの患者様の場合、嫌気的解糖系(酸素を使わない方)が多くっているということです。

筋力低下

筋力の発揮に影響を及ぼす形態(量的)要因には、筋肉の断面積筋線維数があります。イギリスおよびオランダの COPD 患者の大腿四頭筋の筋力を調べた研究では、最重症患者の38%に筋力低下を認めている。しかし、逆を言えば半分以上の患者には筋力低下はないことになります。また、軽症から中等症の患者でも、28%の患者に筋力低下があると言われています。

筋委縮:筋委縮は、筋線維数の減少と筋線維の萎縮によってもたらされます。筋委縮の指標は、筋肉量になるがBMI(body mass index)や除脂肪量インデックス(fat free mass index:FFMI)で推測されます。FFMIは、BMIより筋肉量をよく推測できます。また、限局的な四肢の筋肉量を推測する方法として、下肢であれば、大腿周囲径が用いられます。FFMIの測定では、オムロンやタニタ製品ですかね。私が参加しているフレイルの測定の際は、タニタの製品を使ってます。

シンディ
シンディ

フレイルって

フレイルFrailty:虚弱、弱さ、病弱って意味です)は、「臨床的に障害をきたす閾値があると仮定すると、予備能を持つ身体機能が複数低下している状態」と定義されています。 予防意識を高めるために、2014年日本老年医学会から提唱された言葉が「フレイル」です。 なんだかよく解らないので簡単に言うと、健康状態と要介護状態の中間に値するのがフレイルです。健康の人に比べて要介護状態に至る危険性が高まるだけではなく、転倒する可能性や入院のリスクも高く、健康で長生きができる割合が低くなると言われています。また、身体的問題のみならず、認知機能障害うつなどの精神・心理的問題独居や経済的困窮などの社会的問題も含む概念でもあります。

引用:フレイルトレーナー 養成テキスト,東京大学高齢社会総合研究機構,飯島勝矢

細かなテストなどはこちらを参考にしてください。→フレイルって何?!虚弱!!評価は? | まなびPT (sinji0012312.com)指輪っかテストやイレブンテストなどいろいろ書いてありますよ。

サルコぺニアって何?

サルコペニア(ギリシャ語でSarco=筋肉Penia=減少)は、筋肉量の減少に伴って筋力や身体機能が低下している状態を指す言葉です。
サルコペニアの診断は、骨格筋量、握力、歩行速度の3つをもとに、骨格筋量と身体機能が一定以上低下している場合にサルコペニアと診断されます。詳しくはこちらもチェック→サルコペニア!ダイナぺニア! | まなびPT (sinji0012312.com)

AWGS(Asian Working Group for Sarcopenia)

2019年AWGS改定版を報告しました。基準値は、握力男性28女性18、歩行速度は1.0m/sec となった。

こちらを参考にしてくださいSPPB!!どこでもできる標準的な評価を!! | まなびPT (sinji0012312.com)

COPD患者と筋委縮

※COPD患者様は疾患の重症度によってBMI(Body Mass Index)が低下し、特に女性では30%以上に低下を認める。
※筋委縮は一般的であり、およそ4~35%に認める
※低FFMI(Fat Free Mass Index:除脂肪量指数)のCOPD患者様の26%はBMIが正常である。
 FFMI=体重【Kg】×(1-体脂肪率)÷(身長【m】)²
   =除脂肪体重【Kg】÷(身長【m】)²
 筋委縮の程度を正確に評価することが重要
※COPD患者様はたとえBMIが正常でも低FFMIであることは、低体重者と同様に死亡率を予測する強い因子となる。

Am J Respir Crit Care,Med,2006;173

COPD患者と下肢機能

★COPD患者様は筋力低下や持久力低下を生じる。
★大腿四頭筋の筋力の最大随意収縮(MVC:maximal voluntary contraction)は、健常者と比較して20-30%低下を認める。
★健常者は1年で1-2%程度の筋力が低下するのに対して、COPD患者様は平均4.3%低下する。
★中等度のCOPD患者様の20%程度に筋力低下が認められる。この筋力低下がその後の主要な問題となる。

慢性閉塞性肺疾患における腹筋と大腿四頭筋の筋力 – PubMed (nih.gov)
慢性閉塞性肺疾患の高齢外来患者における大腿四頭筋と吸気筋力の臨床的に重要な最小差の推定:前向きコホート研究 (jst.go.jp)
COPDにおける大腿直筋断面積の超音波測定と大腿四頭筋筋力との関係 – PubMed (nih.gov)
慢性閉塞性肺疾患の重症脱状態患者における膝伸展時の自発的活性化:持久力トレーニングの利点 – Vivodtzev – 2008 – Muscle & Nerve – Wiley Online Library

COPD患者の筋肉量と生命予後

A:低呼吸機能+筋横断面積正常では予後良好
 FEV₁(1秒量):最大吸気位より1秒間の呼出量
        (大きく吸って吐いたとき1秒間の量)
 MTCSA:大腿中央部の断面積(CTスキャン)
B:BMI正常+低FFMI(Fat Free Mass Index:除脂肪量指数)は低BMI+低FFMIと同様に予後不良
 BMI(Body Mass Index:ボディ・マス指数):肥満度の判定に用いられる体格指数のこと。

Probability of surviving:生存確率、Patients surviving:生存患者 の予後

中腿筋断面積は、慢性閉塞性肺疾患患者の肥満度指数よりも死亡率の優れた予測因子です |American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine(米国呼吸器・救命救急医学ジャーナル) (atsjournals.org)
慢性閉塞性肺疾患における体組成と死亡率 – ScienceDirect

COPDとフレイルの関係

フレイルやプレフレイルは、COPDの人でよく見られます。
COPDの高齢被検者がフレイルの状態になっている確率は2倍!!

COPD患者を担当したらまずフレイルを疑ってください!!

COPDとフレイルの関係:観察研究のシステマティックレビューとメタアナリシス – PubMed (nih.gov)

サルコペニアを合併したCOPD患者への運動

運動療法の効果

★サルコペニアを有する高齢者への運動療法は筋量は改善しないが身体機能は改善する。サルコペニアの高齢者における筋肉量、筋力、身体能力のための運動プログラム:系統的レビューとメタアナリシス-PMC (nih.gov)

★サルコペニアを有する高齢者への運動療法はQOLや身体機能が改善する。特にレジスタンストレーニングが効果的で栄養の付加は一部のアウトカムで有用。高齢者のサルコペニアのための運動:系統的レビューとネットワークメタ分析-PMC (nih.gov)

栄養療法ではタンパク質とビタミン付加が身体機能向上に効果的。フロンティア |レジスタンストレーニングに従事する高齢のサルコペニア患者に対する栄養補給の効果:メタアナリシス (frontiersin.org)

運動療法+栄養療法の効果

筋肉量が低下したCOPD患者に運動療法と栄養療法の併用効果を検討
★4か月の外来リハ
★栄養療法併用群はロイシン、n-3FA、ビタミンDを強化
★標準的な高負荷トレーニングを実施
          
★栄養併用群の体組成は、体重、骨格筋量、脂肪量が増加
★高強度運動療法+特定の栄養を補助することで、栄養状態吸気筋力身体活動に対して追加効果がある

COPDの運動トレーニングの補助としての標的栄養の有効性を調査するランダム化臨床試験-PMC (nih.gov)

運動療法

筋力トレーニングと全身持久力トレーニングですが、運動前にコンディショニングもチェックしてください⇒呼吸理学療法!! コンディショニング!! | まなびPT (sinji0012312.com)

運動療法の正しい実践のためには、その意義、重要性、そして生理学的機序や実践方法について情報提供し、個人にあったFITT(Frequency【頻度】、Intensity【強度】、Time【持続時間】、Type【種類】)を明らかにして具体的に指導する必要があります。

筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)

筋力トレーニングでは、理学療法士などの監視下の下、10回の反復が精一杯のレベル(10RMrepetition maximum)による強度で10回を数セット、1日数回実施されます。トレーニングの対象となる筋肉は、抗重力筋として大腿四頭筋下腿三頭筋を優先することが原則であり、自重や弾性バンド(セラバンドなど)などを用いた日常的に行いやすい方法を指導します。速さも自由にコントロールできるので、自身にあった速度で行うように指導します。(スロトレなど)

シンディ
シンディ

注意として

数回の反復でも低酸素症が生じる場合があり、設定する強度や反復回数における呼吸困難酸素飽和度のレベルを評価して指導する必要があります。

ポイント

 日常生活でよく使う動作として、立ち上がりがあります。手すりの使用や座面の高さを高くするなどして負荷量を考え立ち上がりの反復行うと筋力トレーニングと日常生活動作の向上につながります。

持久力トレーニング

持久力トレーニングは、1日1回20分週3-5回が効果があるとされています。
トレーニングの方法は、足踏み、ウォーキング、自転車エルゴメーター、トレッドミルなど実施しやすいものを状況に応じて選択します。歩ける方の場合は、歩行を選択することが多いと思います。6分間歩行を行いどのくらいの速さで歩けばいいのかをチェックしてから行ってください。6Minutes Walking Distance Test(6MWDT)6分間歩行!!! | まなびPT (sinji0012312.com)
6分間歩行がうまくできない方は、こちらの記事もチェックしてください。6分間歩行の代わりに1STST!? | まなびPT (sinji0012312.com)

持続的なトレーニングとインターバルトレーニングは、基本的に効果は同等ですので、途中休憩を制限せず、高度な呼吸困難・低酸素血症が出現する前に積極的に休憩をはさんでください。持久力トレーニングがつらいものでなく、自宅で気軽にできるものであることを理解してもらえるといいですね。

引用:呼吸器疾患患者のセルフマネジメント支援マニュアル.日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 第32巻 特別増刊号(2022)
シンディ
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Take Home Message

COPDの患者様を担当したらまずフレイルを疑いましょう。

栄養と運動療法を!

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